欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
500人中、アジア人は藤田俊哉1人。
オランダで日本人が教える意味と壁。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byKyodo News
posted2015/03/13 10:45
現役時代にオランダのユトレヒトでプレーした経験も持つ藤田俊哉。かつて日本代表監督への意欲を示したこともあり、指導者としての成功が楽しみだ。
オランダは、自国民の就業保護が手厚い。
クラブの外に視線を移しても、藤田を取り巻く環境は決して簡単ではない。
オランダの人口は、2013年の統計で約1680万人。この数字は、東京都よりも約300万人多いだけである。おのずと自国民の就業者を保護する意識は高く、隣国のドイツなどに比べても、外国人が働くための門戸は決して広く開かれていない。
それはサッカー界においても例外ではなく、特に選手ではなく指導者となれば、余計にその間口は狭まる一方だ。
オランダコーチ協会500人で、アジア人は藤田のみ。
「あまり自分の苦労話を言うのは好きじゃない(笑)。でも、今一つだけ痛感している事実がある。それは、本当に思った以上に、オランダで外国人が監督になることのハードルが高いということ。それはこっちにいればいるほどわかる。現状、乗り越えることがなかなか厳しい壁にもぶつかっている。少しずつ、それを乗り越えるための作業はやってはいるけど。
去年、オランダコーチ協会に登録することができた(登録者数500人を超える中、アジア人は藤田のみ)。そこでは自分が持っている日本のS級ライセンスはUEFAのAプロ(UEFAが定める最上級の指導ライセンス)に相当するとは言ってくれている。でも実際には、外国人が監督を務めるためには、とてつもない実績か、もしくは多額の給料をクラブからもらうことで高い税金をオランダに納めることが求められてしまう。なかなか不条理と思うところでもあるけど、その現実は変わらない。
オランダサッカー協会に働きかけるためにコーチ協会を通して話をしたり、必要な書類も揃えたり、地道な作業を同時進行している。幸運にも力になってくれる仲間がいて、'90年代にジェフ市原(現ジェフ千葉)でプレーしたペーター・ボスが現在フィテッセの監督で、彼がコーチ協会の理事にも名を連ねている。彼にはいろいろ助けてもらったりしている。
先日はコーチ協会の総会にも出席して、1歩ずつ、亀の歩みかもしれないけど、着実にオランダサッカーの中に入っていけるようにと思って行動している。あんまりこういうことを話すのも、美徳としてはどうかなと思うけど。でもこれから欧州で指導者を目指す日本人ももっと出てくるだろうから、そういう人たちにとっては大切な部分かもしれないから」