松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
心が揺れてもプレーは揺れず――。
松山英樹が22歳で到達した不動心。
posted2015/02/24 10:50
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
そもそも松山英樹は、アマチュア時代からパットが上手いゴルファーだ。
そんな彼ゆえ、白球を沈めるべき、グリーン上のあのカップの大きさなんて、当たり前のように知っているに違いない。そう思って、尋ねてみた。
「えっ? カップの大きさっすか?」
突拍子もない質問に少々面食らったのかもしれない。両手でカップを作りながら「これの、この大きさっすか?」と目で言い、首を捻った。
「あー、いくつだっけ? 10センチ……10.5か、10.8か……10は確かだ……ボール2個半!」
何センチかは正確には覚えていなくても「ボール2個半」は自信を持って言い切る。そこが、いかにも感覚派の松山らしいなと妙なところで頷けた。
「全英のコースは、こーんなに小さかったっすよ」
そして、頷きついでに、さらに尋ねた。いわゆるゾーンに入ると、カップが大きく見えるという話をいろいろな選手たちから聞いたことがあるが、「松山くんの場合はどう? やっぱり、カップは大きくなったり小さくなったりするのかしら?」
松山いわく、「うーん、好きなコースは大きく見えることもあるっすね」。調子がいいから大きく見えるというわけではなく、好きなら大きく見え、嫌いなら小さく縮んでしまうそうだ。
「去年の全英のコースなんて、カップは、こーんなに小さかったっすよ」
そう言いながら、今度は両手で望遠鏡を覗くような形を作り、ちょっぴりおどけて見せた。
なるほどね。またまた頷き、そして思った。グリーン上の本物のカップではなく、これから挑む試合、目の前に立ちはだかるコースそのものが「仮想のカップ=輪っか」だとしたら、その輪も状況次第で大きくなったり小さくなったりするのではないか、と。
気持ちとは別に、淡々とプレーができる松山。
心技体の状態、コースの好き嫌い、試合に対する思い入れ――。
諸々の要素が絡み合い、仮想のカップは大小さまざまに変化する。けれど、その輪が大きく易しく見えようとも、とんでもなく小さく難しく見えようとも、淡々とプレーし、粛々と挑み続ける。ノーザントラスト・オープンで4位に食い込んだ松山の4日間の戦いぶりからは、そんな姿勢が見て取れた。