松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
心が揺れてもプレーは揺れず――。
松山英樹が22歳で到達した不動心。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2015/02/24 10:50
「崩れないことが一番大事」と繰り返していた松山。一喜一憂することなく記者取材にも堂々と応じる、プロアスリートとしての度量の大きさも魅力。
無理、無茶はしないが、狙った数字は死守!
ショットやパットの不調を試合の中で調整していく。そのとき何より大切なのは、技術面で試行錯誤しつつも、崩れず、スコアや順位を落とさないこと。
仮想のカップが小さく難しく、なんとかしてそれを広げようとするにしても、無理や無茶はせず、維持するべき数字だけは死守する。それこそが、松山のプロ意識、プロとしての彼のこだわりなのだ。
「今週、ダブルボギーは1つも打ってない。そういうふうに傷口を広げないようにするのが難しいコースでは大事。そういう部分は頑張れたのかなと思う」
目指すは常に優勝だ。けれど、それだけではないことを今年の松山は戦い方で示している。
「少しでも上位に行って、少しでも(ポイントを)加算したほうが、後々、自分に響いてくる。だから、優勝が無理でも捨てないでやるのが大事」
そう言って満足そうに頷いた松山は、米ツアーわずか2年目の弱冠22歳にして、すでにベテランの風格を帯びていた。
22歳のベテランと22歳の現代っ子と。
穏やかな笑顔をたたえながらコースを去ろうとしていた松山が、どこかうれしそうに大きな声で叫んだ。
「あー、10.8だ!」
そう、アナタが白球を必死に沈めるあのカップの直径は、10.8センチ、108ミリ。
「何でわかったの?」と尋ねると、松山は手にしていた携帯を見せながら、「フツーにこれ(検索サイト)で調べただけっすよ」
ついさっきまでベテラン選手のようだった彼の笑顔は、瞬く間に22歳のフツーの現代っ子に変わっていた。