サムライブルーの原材料BACK NUMBER
攻撃陣で唯一アジア杯の出番無し。
小林悠が考える「試合を決める選手」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2015/02/23 10:30
入団6年目、今季から川崎の副主将を務めることが決まった小林悠。プレーだけでなくチームの中心としても主将の中村憲剛を支え、6位に沈んだ昨季の雪辱を果たす。
高校時代の同級生、太田宏介との会話。
試合に出ないと、コンディションの調整も難しくなってくる。「身」ばかりでなく、「心」もそうだ。
親友である麻布大学附属渕野辺高サッカー部の同級生、太田宏介も小林と同じく出場機会がなかった。彼は控え選手が活躍した前回大会の映像を「ユーチューブ」で見るなどして、気持ちを高めていた。2人は「しっかり準備しておこう」「辛抱して待つことも大事だ」と声をかけ合っていた。
結果的に、2人とも出場ゼロに終わった。しかし、葛藤しながら苦しみながら準備を整え、チームを支えていこうとした経験は小林を心身において強くした。タフにした。
彼は言葉に力をこめる。
「試合に出られなかったことはもちろん悔しいです。でもアジアカップの緊張感を味わえたのは自分にとってプラスになりましたし、代表のメンバーと一緒に練習したり、サッカーの話をできる環境が、自分の成長につながったかなと思っています。
気持ちの部分でも簡単ではなかったですよ。もっとやれるぞという気持ちがあるなかで、チームを鼓舞したり、応援していかなきゃなりませんから。でも監督が決めた先発メンバーだし、出ている人たちはみんなうまいなって思いました。悔しさと認めざるを得ないところ、その葛藤がありましたね。でも、試合に出られないのはまだまだ自分の力が足りないから。そこはしっかりと受け止めることができましたし、いろいろ気づけた大会でもあったので経験できて凄く良かったなと思います」
「果てしなくある」向上心に火がついた。
小林の好きな言葉は「向上心」だという。高校時代から大事にしてきた言葉で、常に自分に問いかけてきた。「果てしなくある」向上心に、さらに火がついた。
やるべきこと、成すべきことは分かっている。
「去年のシーズンで動き出しの部分は完全に自分のものにできたと思う。相手の体の向き、体重(のかけ方)、視線とかを見て動き直したり、動きを変えることで裏を取れる場面が実感として何度もありました。オフザボールのところでは完全に自分のものになったなと感じているので、次はボールを持ってどんどん仕掛けられるようになればいい。自分一人の力で打開できるようにならなきゃいけないというのが、この大会で強く感じたことです。そこはフロンターレで練習するしかないと思います」