欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
南野拓実「残された時間は多くない」
視線はすでにザルツブルクの「次」へ。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/02/20 10:40
リオ五輪を目指す五輪代表チームのエースでありながら、ブラジルW杯でも予備登録メンバーだった20歳の南野拓実。ザルツブルクをステップアップの場にできるか。
チームの攻撃が機能しなければ、南野の活躍も難しい。
ザルツブルクのゴールの大半に絡んできた2人が去った影響は、決して小さくはない。実際ウインターブレイク明けの初戦となったこの試合でも、中央からの攻撃も、フォワードとサイドバックの連係にMFが絡んでくるサイドからの攻撃も、改善の余地が大きい。そもそも、チームとしての攻撃が機能していなかったのだ。
さらにこの試合では、ピッチ状態があまりに悪かった。試合の開催そのものが危ぶまれていたほどだ。そこで効果的なドリブルや、正確なトラップをするのは難しい部分はあるかもしれない。
あるいは、南野自身も昨年はクラブでの活動だけではなく、U-19日本代表とU-21日本代表の活動に参加して、十分なオフをとることなくザルツブルクに合流した影響もあるだろう。
獲得理由は「ひんぱんにシュートを狙っていく選手だから」。
しかし――。
かつてはシャルケやホッフェンハイムなどで監督として指揮をとり、現在はザルツブルクのSD(スポーツディレクター)を務めるラングニックは南野を獲得した理由について、こう話している。
「ミナミノは力強くて、スピードに乗ったドリブルが出来て、ひんぱんにシュートを狙っていく選手だからだ」
あるいは、セレッソ大阪でコーチや強化部の立場から南野をはじめ、香川真司や柿谷曜一朗などを間近で見てきた小菊昭雄は『セレッソ・アイデンティティ』のなかで、こう語っている。
「技術的にいうと、真司や曜一朗の18歳のときのほうが上だし、繊細なボールタッチやパスの精度などを比較したら、彼らのほうが優れているといえることはたくさんある。でも、例えばゴールに向かう姿勢、シュートテクニック、シュートを決めるセンスを含めたトータルでとなると、一番怖い選手は拓実なんです」
周囲の目利きたちが認める南野の能力を考えれば、いくつかのエクスキューズがあるとはいえ、物足りなさの残るデビュー戦だったことは疑いようがない。