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手倉森U-22がシンガポールに8-1。
「格下に圧勝」だけじゃない成長度。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2015/02/17 11:00
フル代表のコーチも務める手倉森誠監督は、ロシアW杯に五輪組を送り込むことを強く意識している。
北京五輪で痛い目を見た本田や岡崎から学ぶもの。
「頼もしいなあ、と思いましたよ」
指揮官はそう言って笑顔を浮かべたが、実は昨年末のU-21タイ代表戦でも、選手たちに戦い方を任せている。アジア大会までの4-3-3ではなく4-4-2でスタートしたものの、「状況に応じて戦い方を変えるのは問題ない」と話していた。
そこには、明確な意図がある。
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「いまのフル代表の(本田)圭佑や岡崎(慎司)らは、北京五輪とかで痛い目に遭って急成長した。リオ五輪を目ざす我々の世代は、痛い目に遭う前から成長する意識を育まなきゃいけないと思っている。リオ五輪が終わって我々の世代から誰がロシアW杯へ絡むんだとなったときに、自分から工夫できたり、自分から目の前の山を越えて見せようとする選手でなければ、ロシアへは行けないと思うから」
「情報がないと戦えないようでは成長しない」
リスタートの位置づけも同様である。U-23シンガポール戦で記録した8つのゴールは、すべて流れのなかから生まれた。「攻撃のバリエーションとコンビネーションの高まりを感じた。誰と誰が組んでも、システムが変わっても、同じ絵を描いて仕掛けられるようになってきた」と評価しつつ、手倉森監督は「リスタートから得点できず、リスタートから失点してしまった」と振り返った。78分に喫した唯一の失点は、自陣左サイドで与えた直接FKをきっかけとしていた。
だが、リスタートから取れないことも、リスタートで取られたことも、指揮官には想定内だったに違いない。試合前日の13日には午前と午後の2部練習を行なったが、リスタートには時間を割いていなかった。
これもまた、はっきりとした意図を含んでいる。
「相手がリスタートで何をしてくるんだというところを、公式戦ならある程度の予測を立てるために情報を入れる。ミーティングで対策を伝えたりするけれど、情報がないと戦えないようでは成長しないから」
スカウティングに寄りかかったリスタートで成果をあげるよりも、ピッチ上でどれだけ対応できるのかを追求する。発展途上の世代には必要なアプローチだっただろう。