フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
四大陸フィギュア、日本勢は苦杯。
優勝デニス・テンは五輪の金目指す。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2015/02/16 11:00
表彰台左から、銀メダルのジョシュア・ファリス(米国)、金のデニス・テン(カザフスタン)、銅のエン・カン(中国)。21歳のテンは「世界選手権が楽しみです」と早くも優勝への意気込みを見せた。
ローリー・ニコルに仕込まれた華麗なスケーティング。
かつてモスクワでタチアナ・タラソワにも指導を受けていたこともあるテンが、カリフォルニアに移住したのは、2010年の春のこと。ベテランコーチのフランク・キャロルに指導を受けたいと願ってのことだった。
テンの伸びやかなスケーティングや、大きく全体を使う体の動かし方がどことなくパトリック・チャンを髣髴させるのは、偶然ではない。キャロルの元に移って以来、チャンを子供の頃から育ててきた名振付師のローリー・ニコルが、テンを指導するチームに加わったのである。
ソウルで彼が見せた演技は、まさに「本来のスケートの表現力とは、あくまでスケーティングから来るもの」というニコルの信条を体現した、王道を行く滑りだった。
平昌五輪での金メダル候補として。
「デニスを指導するのは、蝶を捕まえるようなもの。窒息させないように気をつけながら、しっかりした基礎と厳しい練習の習慣を身につけさせていくのは、コツがいりました」とニコルは、テンについてコメントしていた。
テンが安定性を身につけて、この大会で見せたレベルを毎回保つようになれば、さらにスコアを上げていくだろう。
特に注目されるのは、3年後の平昌五輪である。韓国系移民の子孫であるテンにとって、韓国は第二の故郷のようなもの。ソウルの大会でも観客から大きな声援を受けて、ホームアドバンテージを存分に生かした演技を伸び伸びと披露した。このまま順調に伸びていけば平昌では五輪2連覇を狙う羽生結弦にとって、怖い存在になるだろう。まずは1カ月後の上海世界選手権で、どのような演技を見せてくるか注目したい。