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野村元監督は見抜いていた打者適性。
楽天・片山、10年目の転向を考える。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/02/13 10:40

野村元監督は見抜いていた打者適性。楽天・片山、10年目の転向を考える。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

バットを持った姿が新鮮な片山博視。高校通算36本塁打の打撃は今も錆びていないか。

「お前の契約金のうち、半分は野手としてのもの」

 糸井の恩師で、かつて近畿大を率いていた榎本保氏がこんな話をしている。

「糸井は自由枠で日ハムさんにお世話になったんですけど、プロに行くときに僕が糸井に言ったのは『お前の契約金のうち、半分は野手としてのものだからな』ということでした。野手としての可能性も期待されていると、プロ入り時点で伝えていました」

 いわば、糸井の打者転向は想定内だったのだ。当時の担当スカウトのリポートや球団GMの決断があって成功を収めた。ただの偶然ではなかったといえるのだ。

雄平がもしもっと早く転向していたら……。

 雄平の方は、こちらも東北高時代から投打ともに優れた才能を発揮し、どちらの世界で生きていくかが注目されていた選手だった。しかし、本人の希望もあって打者転向の決断に多くの時間を要した。

 致し方ない面もある。「高校生にして150kmを投げる左腕」というのがあまりにも魅力的だったからだ。当時のアマチュア選手では左腕最速だったし、昨今、プロ・アマ問わず、好打者に左打者が偏っていることを考えると、スピードという“特徴”を持った左腕は貴重だった。

 打者転向の決断までに掛かった7年を長いとみるか短いとみるかは意見が分かれるところだが、今の雄平の活躍を考えると、それほど問題ではなかったと考えるのが一般的かもしれない。

 しかし糸井のケースと大きく異なっているのは、それは雄平が高いバッティングセンスを持ち、努力家であったゆえ、たまたま成功につながっただけであるという点である。「契約金の半分は野手」という共通理解があって入団していた糸井のケースとは意味が違う。見方を変えれば、雄平にも糸井と似たようなビジョンがあれば、今よりもさらにスーパースターになっていた可能性がある。

 ここで重要になってくるのは、選手の輝く場所をどう見つけるか、という観点ではないだろうか。

 いわゆる“Right Position”という考え方だ。

 Right Positionとは「人は適した位置に配することで、必ず輝ける」という考えのことである。これはスポーツに限らず、一般社会やビジネスの世界にも通じる、人材育成を考えるうえで非常に重要な、いわば思想のようなものだ。

【次ページ】 野村克也元監督は、片山に打者転向を勧めていた。

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