プロ野球亭日乗BACK NUMBER
人々の目が松坂大輔に向く陰で……。
攝津正が受ける“恩恵”と再起。
posted2015/02/16 12:05
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Keiji Ishikawa
久々に見る光景である。
一人の選手が動くと、その周りを新聞記者が取り囲み、そのまた周りをテレビカメラが遠巻きにする。そしてその一団とともにファンの塊も動く。
最近でこれだけ注目を集めたのは、2010年のドラフト1位で日本ハムに入団したハンカチ王子こと斎藤佑樹投手の名護キャンプ以来ではないだろうか。この現象を見ても、やはりそれだけこの男には、スターの輝きがあるということなのだろう。
宮崎市内の生目の杜運動公園で行なわれているソフトバンクの春季キャンプ。その話題の中心にいるのは、9年ぶりに日本球界復帰を果たした松坂大輔投手である。
連日ソフトバンクキャンプには、松坂見たさにファンが詰めかけ、報道陣の多くも背番号18の一挙手一投足を追いかける。その中で主役はゆっくりとマイペースの調整を続けている。
もちろんこの右腕がどれぐらいの成績を収めるか、が連覇を狙うチームと今季から就任した工藤公康監督にとってのキーポイントであることは間違いない。期待通りに1年間、先発ローテーションの柱となって15勝近くの勝ち星を挙げてくれれば、パ・リーグの優勝争い大本命のポジションは揺るぎないものになる。ただ、その一方で長い間のメジャー生活から、もはや昔の面影もなくなった投球フォームや日本のマウンドへの対応など、不安がないわけではない。
「7、8勝できれば上出来。下手をすればもっと勝ち星は少ないかもしれない」
キャンプを訪れた評論家の中には、こんな辛口の評価を下す人もいるようだ。
松坂加入のプラス効果は、勝ち星だけではない。
だが松坂が帰ってきたことは、ソフトバンクにとっては、勝ち星という目に見えるプラスアルファ以外にも、その効果はあるだろう。
マスコミの目が松坂に集中することで、他の選手、特に投手陣がマイペースで非常に落ち着いたキャンプを過ごしているのが印象的だからだ。
「暇だったんで……他にやることもなかったんで来ました」
その中で、練習が休みだった2月13日も休日返上トレで精力的に動き回っているのが、エースの攝津正投手だ。