錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
自分より上位選手との試合の方が楽!?
錦織が世界5位で居心地が悪い理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byImaginechina/AFLO
posted2015/01/27 16:30
自分より実績が上とも言えるフェレール戦で完勝した錦織。「打っていて気持ちよかった。どんどん良いプレーも出て、思い切りも良くなったと思う」と試合後にコメントした。
フェデラーやナダルらと異なる、錦織の成長曲線。
初めてトップ20入りした2012年1月から、昨年5月にトップ10入りするまでの約2年半の間、錦織はほとんど常にこの15位から20位あたりにいた。
このままではいけない、殻を破りたいと強く願っていたはずなのに、過ぎてみればそこがなかなかに居心地のいい場所だったとは、まるで青春時代のようだが、過ごした時間の長さは居場所としての愛着と大いに関係があるだろう。
それでは、他のトップ選手はどうだったのか。
厳密に15位から20位の間にいた期間を見てみると、たとえばロジャー・フェデラーはわずか2カ月で、ノバク・ジョコビッチも3カ月足らずでさらに上位へと進んでいる。驚いてはいけない。ラファエル・ナダルにいたってはたった2週間である。彼らはトップへ一気に駆け上がり、この地位を築いた。
フェデラーは昨年のウィンブルドンでだったか、20代の「若手」にちょっとした苦言を呈したことがあった。
「若いといっても、彼らはもう期待され始めて長いし、もう何年もツアーにいる。僕やラファやノバクは違ったよ。もっと若いときにトップまできた。今、テニス界がより欲しているのは10代の新星じゃないかな」
つまり、テニス界を背負っていくようなプレーヤーになるには23歳や24歳で「若手」と言われているようではもう遅いというのだ。
18歳の錦織は「次のスター」と世界的に騒がれた。
振り返れば、錦織が18歳のときにアメリカのデルレイビーチでツアー初優勝をしたとき、彼こそが次のスターだとテニス界は色めき立った。それから1年くらいは、その期待に十分応えるだけのステップアップを見せていたが、あまりにもケガの多い体、トップ10が見えていながらなかなか突破できない状況に、デビュー時の衝撃ほどの熱量を維持し続けていたとは思えない。
だが、今となってはあの2年半こそが錦織の強みになっているのではないかと信じられる。ビッグ3と同じ道を歩んできたわけではないが、時間がかかった分、そこで体力も気力も鍛錬を重ねた今の錦織には信用がある。