錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
自分より上位選手との試合の方が楽!?
錦織が世界5位で居心地が悪い理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byImaginechina/AFLO
posted2015/01/27 16:30
自分より実績が上とも言えるフェレール戦で完勝した錦織。「打っていて気持ちよかった。どんどん良いプレーも出て、思い切りも良くなったと思う」と試合後にコメントした。
海外メディアが食いついた錦織のセリフとは?
テニスの楽しさ、挑戦する興奮を体中から発散させるようなプレーだった。トッププレーヤーはグランドスラムの2週目になると目の色が変わる、ギアが一段上がるとはよく言われることだが、かつて周囲の選手からそれを肌で感じていた錦織が、自身でそれを体現して見せてくれている。
その変化にしても、43本ものウィナーを決めてラリー戦を支配するプレーにしても、世界5位にふさわしいものだったが、このところ、錦織が発したこんな台詞に特に海外メディアがよく食いついている。
「世界5位という位置はまだ居心地が悪い……」
初々しい感想に思わず頬が緩んでしまうのは、日本人だろうが外人だろうが同じなのだろう。
一番居心地が良いのは「15位とか20位……」。
フェレールに勝った直後のオンコート・インタビューで、インタビュアーを務めた元王者ジム・クーリエが「居心地がよくなるために必要なものは何?」と聞くと、錦織は「時間が経てば」と答えた。昨年11月初めにこの自己最高位にたどり着いてから、まだ3カ月と経っていない。トップ10に定着してからすぐにトップ5に入ったことも心の準備期間を奪っただろうか。
その後の記者会見では、もう少し突っ込んだ女性記者がいた。
「じゃあ、何位くらいが居心地がいいのかしら?」
苦笑した錦織は、しばらく間を置いてから、答えた。
「多分、15位とか20位……」
インタビュールームに笑いが起こる。けっこう控えめな数字が出てきたからなのか、いかにもわかりやすい答えだったからなのか。
「わかりやすい」というのは、錦織がこの「15位から20位」を定位置にしていた時期がかなり長いからだ。