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復活途上での日本球界復帰。
松坂大輔の選択が「吉」な理由。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/19 10:50
王貞治球団会長から「背番号18」のユニフォームを受け取ったソフトバンク・松坂大輔。「世界一を目指しているチームの一つのピースになる」と、一羽の鷹として闘志を燃やす。
現在は復活途上、日本復帰は「吉」!。
それでも'13年のメッツ移籍後は復調の気配があり、'14年は'11年以降では最多となる83回3分の1を投げている。復活途上での日本球界復帰になったわけだが、それが松坂にとって吉か凶かというのがこの原稿の主要なテーマである。
私は「吉」だと思う。固いマウンドが柔らかいマウンドになり、大きく滑るボールが小さく滑らないボールに変る。そういう環境の変化が、松坂の復活に力を貸すと思っているのだ。
西武時代とメジャー時代とでは投球フォームが異なる。西武時代は両腕を内側から絞り上げるようなバックスイングでテークバックに向かい、腕の振りはオーバースロー。それがメジャー移籍後は上体と顔を横に振ってバックスイングに入り、腕の振りはスリークォーター。さらにステップには粘りがなくなり、淡泊にポンと前に出すような形に変り、ステップ幅も狭くなった。
メジャーのマウンドは日本より固いため、ステップしてから爪先の向きを変えるような“微調整”ができない。着地した瞬間にスパイクの刃が刺さった状態でロックされるので、ステップ幅を狭めてポンと置くような出し方になり、下半身を十分に使えない分、上半身に力をつけることが必要となって、体重を増やさざるを得なかった。しかし、松坂はそのパワーピッチングをしたくてしていたわけではないと思う。微調整のきくマウンドに変われば、下半身で上体をリードする西武時代の投げ方に戻すことができる。
ボールの変化も、松坂からしなやかさを奪った。
ボールの仕様にしても同じことが言える。「軽く叩かれただけで持っていたボールが下に落ちる」と言われるほどの日本式の柔らかいボールの握りは、球自体が大きく縫い目が高くて滑りやすいメジャーのボールではできない。強く握って上半身の強さで投げるというメジャー式のスタイルに変わったことにより、松坂のピッチングからしなやかさがなくなり、中南米のベテラン投手のような投げ方になってしまった。
メジャー仕様から解放され、さらに右ヒジ手術のリハビリを完全に終えたとき、どんなピッチャーに変身しているのか非常に興味深い。