プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“売れ残り”が果たした劇的な復活。
フェライニがマンUで放つ「異彩」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/11/30 10:50
一度は髪を短く切ったフェライニだったが、トレードマークのアフロも復活し、ピッチ上で存在感を放っている。マンUの異端児はCL出場権奪還を実現できるか。
ファンハールが意識しはじめた「堅実性」。
ところが売れ残った格好のフェライニが、立ち直りを窺わせるマンUの主力と化している。きっかけは、2度のビハインドを追い付いた第8節ウェストブロムウィッチ戦(2-2)。ハーフタイムを境にアンデル・エレーラと交代してピッチに立ったフェライニは、後半開始3分後にゴールを決めて試合の流れを変えた。
試合後に「私は創造性の持ち主を好む監督だが、イングランドで戦うにはフィジカルの持ち主も必要なようだ」と、ファンハール。新監督の認識と選手当人の活躍を反映し、フェライニは続くアーセナル戦までの4試合でスタメンに名を連ねた。
パフォーマンス的にも、連続先発に相応しい内容だ。ポイント獲得に成功した3試合は、平均で10点満点中7点の評価を与えてもよい。身長194cmという高さが、セットプレーからのクロスはもちろん、中盤から機を見て放たれるロングボールのターゲットとしても活用され、敵への「脅威」と呼べる存在となっていた。開幕当初のフェライニは、昨季モイーズ体制失敗の象徴のようだったのだから特筆に価する。
「似たタイプが多い」中盤で放つ異彩。
ファンハールは、守備力に問題を抱える一方で、攻撃陣でもエース格のロビン・ファンペルシが本調子ではなく、新FWのラダメル・ファルカオがコンディション不足で出場数が限られているチームを前に、監督としての好みである創造性を抑え、現実に即した堅実性を意識するようになった。
そして理想とする選手像とは異なるが、指揮官が「似たタイプが多い」と認めたMF陣にあって、異質の強さと高さを持つフェライニが意外な戦力として浮上した。
代表的な例が、今季初先発となった第9節チェルシー戦(1-1)だろう。フェライニに対するファンハールの要求は至極単純。セスク・ファブレガスのマンマークとカウンター時の攻撃参加だ。チーム内最高となる計12km以上の距離を走ったマンUセンターハーフは、この2つの任務を全うした。
同じ4-2-3-1の陣形で対峙したセスクは、今季は攻撃力が目を引くチェルシーの中枢。それまで1試合平均で約90本のパスを成功させていたが、フェライニの形をした影にまとわりつかれたマンU戦では、半数以下の40本に抑えられた。
セスクを封じ込みながらも、フェライニ自身には、セスクのCKをヘディングでクリアしてから相手ゴール前まで駆け上がり、自らバックヒールで得点に迫る場面も見られた。終了間際にファンペルシが蹴り込んだ同点ゴールも、フェライニがヘディングで相手GKのセーブを呼んだ後のこぼれ球から生まれている。