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松山英樹と石川遼、対照的な方法論。
「What」と「How」は「Win」のために。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2014/10/22 10:50
3位タイ、10位タイと順調な新シーズンのスタートを切った松山英樹。昨季はPGA賞金ランキング27位と一流選手の仲間入りを果たし、さらなる飛躍に必要なものを手探りで探している段階といえるだろう。
方法論がある石川遼だが、昔は目標設定が甘かった。
一方、石川遼は研究熱心で分析好きで、「Why」や「How」に対しては、コーチがおらずとも「これだ!」と自分で答えを出すことがきわめて多い。
「パットのラインを読むときは僕は3分割して読んでます。9mのラインなら、最初の3m、次の3m、最後の3mと3つに分けて読んでます」
という具合だ。石川がそんなふうに自力で見出した「How」が功を奏した例、好結果につながった例は他にも多々ある。しかし石川の場合、目を向けていた目標自体が、少々現実離れしていた、なんて失敗談も過去にはいくつかあった。
そう言えば、昨年の開幕第2戦で2位に食い込んだときは、「僕は昔、左右にOBや池があるのに、それに気づかずにドライバーを振りまわしていた感じだったけど、今はその怖さを知った」と、クラブ選択やコース攻略の重要性に気付いた話を明かしてくれた。
そして今年は、こんな話もあった。
石川はスロースターターを自認しているのだが、以前は「スロースタートして、まくっていくのが格好いいと思ってた」と苦笑しながら冗談混じりに秘話を明かし「でも、PGAツアーでは、そんなこと言っていられない」と、今はきっちり現実を直視して課題に取り組むようになった。
「What」「Why」「How」への向き合い方が異なる2人。
そう、開幕第2戦は初日に103位と出遅れながらも日に日に順位を上げていき、最終的には28位まで巻き返した。しかしそれは、もちろん格好いいからではなく、修正を重ねた結果の、米ツアーで生き残るためのサバイバル術だ。
下位でスタートした現実を受け止め、「上を見るのではなく、やるべきことに目を向ける」と心に決めたことで、大きく巻き返すことができた。
「100位以下からのスタートでも、ここに戻って来れる。予選を通って、順位を上げて終われたことは次につながる。最後までグリーン上は入ってくれなかったけど、ショットさえ良ければ悲観する部分はあんまりない。先の見通しが付いた。(今季の)いいスタートが切れた。今後が楽しみです」
着実な挽回実績を試合の中でまた1つ築いた石川は、どこかで夢見る理想派の“遼くん”から、現実派、実戦派の米ツアー選手・石川遼へ成長しつつある。
米ツアー2年目を迎えた松山と、3年目を迎えた石川は、「What」「Why」「How」への向き合い方がそれぞれ異なる。それが正しいか、正しくないかは誰にもわからないけれど、ただ1つ確かなことは、松山は松山なりに、石川は石川なりに、それぞれの「今」に必死に向き合っているということ。そして、目指しているのは「Win」の「W」だということ。
それが、松山と石川のどちらからも、ひしひしと伝わってきた開幕2試合だった。