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ボランチか、トップ下か。
ウィルシャーを巡る「天職」論争。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2014/10/20 10:40

ボランチか、トップ下か。ウィルシャーを巡る「天職」論争。<Number Web> photograph by Getty Images

今は「自信を持ってプレーしている」と語ったウィルシャー。トップ下からボランチに移ってさらなる才能を発揮することができるか。

守備だけならミルナーでこと足りるが……。

 ならば、無理をせずにウィルシャーを中盤の底から解放すれば良いのだが、そうするとボランチ適任者がいないというチーム事情が露呈されてしまう。ウィルシャーのボランチ起用に懐疑的な識者たちも「代わりに○○を使うべき」とまでは言えずにいるのがイングランドの実情だ。

 スティーブン・ジェラードとフランク・ランパードの両ベテランは、今夏のW杯を最後に代表引退。マイケル・キャリックも33歳で、今季開幕前からの怪我がなかったとしても代表での余命は限られる。

 予選で中盤の構成員となったジョーダン・ヘンダーソン、アダム・ララーナ、アレックス・オクスレイド・チェンバレン、ファビアン・デルフといった顔ぶれは、揃って攻め上がりを身上とするタイプだ。

 サンマリノ戦(5-0)での前半のように、攻守の便利屋としてホジソンの信頼が厚いジェイムズ・ミルナーをボランチで使う手はある。しかし、運動量で勝負するミルナーは「最終ライン手前のストッパー」にはなれても、指揮官が意図する「中盤深部のプレーメイカー」にはなれない。つまり、中盤中央でのウィルシャー起用は、理想的とは言い難いが現実的には最高の選択肢なのだ。

セスク・ファブレガスと比較された「闘争心」。

 実際の出来も、スイス戦からは悪くない。続く2試合では、明らかな格下との対戦だったとはいえ、チーム内最高レベルのパフォーマンスを示している。

 いずれの試合でも、ウィルシャーは5度の得点機を演出。エストニア戦で披露したチップキックによるライン裏へのラストパスと、瞬時に逆サイド前方にチャンスを生んだダイアゴナルパスは、「中盤中央の策士」と呼ぶに相応しいものだった。反応したルーニーがきっちりとゴールを決めていれば、マン・オブ・ザ・マッチの栄誉は満場一致でウィルシャーの物だったに違いない。

 指摘され続ける守備面でのポジショニングやスペースのカバー意識、そしてボール奪取後の判断は、実戦を通して改善していけば良い。クラブでも、メスト・エジルとアレクシス・サンチェスが加わって充実度が増した2列目ではなく、ダブルボランチか3センターの一角で起用される機会が増える点は代表にとって好都合だ。

 体格的には小柄なウィルシャーだが、闘争心は旺盛でタックルを躊躇うようなこともない。アーセナルの中核だったセスク・ファブレガスがバルセロナへと去った3年前、その後継者と目された理由は、リズミカルなパスワークに代表される攻撃センスだけではなかったのだ。

【次ページ】 ピルロ、マスチェラーノ、シャビ・アロンソという手本。

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