野球クロスロードBACK NUMBER
“弱いロッテ”を変えた強気と度量。
里崎は最後まで「野球好き」だった。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/09/30 10:40
引退セレモニー後、紙吹雪が舞う中でスタンドに手を振る里崎。ちなみにロッテが発売する「ビックリマン」の終身名誉PR大使に就任するなど、現役を退いてからもファンを楽しませてくれそうだ。
名捕手、そして指揮官・伊東勤の目から見た里崎。
それは、西武時代にチームを7回の日本一に導いた名捕手であり、現在ロッテで指揮を執る伊東監督の言葉が物語っている。
「僕の場合は敵として戦う機会が多かったし、自分もキャッチャーだったんでね。そういう視点から言えば、やっぱりゲームを支配するのはキャッチャーだし、彼は本当にリーグを代表する選手だな、と思いながら見ていました。その功績は称えたいし、彼のようなキャッチャーが引退してしまうのは惜しいですよね。『16年間、お疲れ様でした』と言いたい。今後は彼に続く選手、後継者を作っていくのが僕の役割だと思っています」
引退してしまうのが惜しい選手。
指揮官の言葉は決して大袈裟ではない。引退試合に集まったファンの人数はもちろん、セレモニーでの球団とファンによる粋な計らいも、それをはっきりと理解させてくれた。
紙吹雪、オリックスファンの声援、そしてゲリラライブ。
グラウンドを一周する里崎がライトスタンドに向かうと、大量の紙吹雪が海風に乗って勢いよく舞い上がる。割れんばかりの里崎の応援歌とチャンステーマ。それは、通常なら起こるはずがないオリックス応援団が陣取るレフトスタンドからも巻き起こったのだ。
「レフトスタンドもすごかったでしょ。あんなの、見たことないですよ!」
セレモニーが終わった直後、顔を紅潮させた里崎が嬉しそうに言った。
「日本シリーズくらいの大声援でしたよね。本当に幸せだな、と。16年間、支えられてきたんだな、と改めて感じましたね」
だからこそ、最後の最後までファンにご奉仕しなければならなかった。
そのご奉仕とは、今もロッテファンの間では「伝説」として語り継がれている、「里崎智也オンステージ」である。
'05年4月9日の日本ハム戦でヒーローとなった里崎が、試合直後に球場前の特設ステージで『WE LOVE MARINES』を熱唱した“ゲリラライブ”。それを、引退セレモニーの20分後に開催したのだ。
『WE LOVE MARINES』と『千葉、心つなげよう』を、声がかすれて出なくなるくらい熱く歌い上げる。そして、ステージ周辺、スタジアムの3階席からも送られたアンコールには、SMAPの『ありがとう』で応えた。