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シャムスカ体制の「誤算」を考える。
土台なきジュビロが陥ったJ2の罠。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE.PHOTOS
posted2014/09/27 11:00
2009年の大分時代から、5年ぶりのJリーグ復帰だったシャムスカ監督。J1復帰は至上命題だったが、ジュビロの命運はプレーオフにに委ねられることが濃厚だ。
開幕前、「J1優勝」を目標に掲げたシャムスカ。
開幕前の会見で、シャムスカは「J1優勝」という将来の目標を口にしていた。彼自身も、J2という舞台に戸惑っていたのだろう。大分時代の2008年、リーグ4位、ナビスコカップ優勝を果たしたが、そのスタイルは堅守速攻だった。もしかすると、磐田が試みるポゼッションサッカーは決して得意ではなかったのかもしれない。そして、J2における磐田の立ち位置も、シャムスカが手腕を発揮しやすい環境ではなかったのだろう。
磐田に勝利した水戸の柱谷哲二監督は、試合後にこうコメントした。
「我々のスタンスは変わらないわけだから、『出し切る、やりきるができなかったら、何も俺たちにはないよ』という話をして選手を送り出しました」
その言葉からは、チームの土台をつくり、そして一貫した方針のもとに継続してきたことへの自信が感じられた。大勝しただけでなく「自分たちのサッカーをやりきり勝ったこと」に大きな価値があるのだ。
昨シーズンのデジャブのような悪い流れ。
「迷っているよね」
バスに乗る直前、「チームに迷いが感じられる」と訊くと、松井は苦笑いと共にそう答えた。その表情を見ながら、彼のゴールシーンを思い出す。
汗をかくプレーでチームをけん引する鈴木に劣らない、泥臭いプレーでボールを追い、相手のミスを見逃さず得点を決めた。そこから磐田のリズムで試合が展開するかと思われたが、気がつくとピンチになってしまう。そんな流れは、昨シーズンのデジャブのように思えた。
点を獲る形、チームとしての土台がないから、簡単に崩れてしまう。“かつて”の磐田と比べるつもりもないが、攻守にわたって連動性に欠け、スタイルが見えない現状では未来は描けない。