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「すべてが完璧だった」クロワデュノールの日本ダービー“現地ウラ側”…38歳の苦労人・北村友一はなぜ“泣かなかった”のか? 会見後に見た、ある光景

posted2025/06/02 17:02

 
「すべてが完璧だった」クロワデュノールの日本ダービー“現地ウラ側”…38歳の苦労人・北村友一はなぜ“泣かなかった”のか? 会見後に見た、ある光景<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

堂々たる横綱相撲で後続を振り切り、日本ダービーを制したクロワデュノール。鞍上・北村友一とともに皐月賞の雪辱を果たした

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Keiji Ishikawa

 世代の頂点を決める“競馬の祭典”第92回日本ダービー(6月1日、東京芝2400m、3歳GI)で、北村友一が乗る1番人気のクロワデュノール(牡、父キタサンブラック、栗東・斉藤崇史厩舎)が優勝。無敗で臨んだ皐月賞で2着に敗れた悔しさを晴らした。

 デビュー20年目、38歳の北村はダービー初制覇。2021年の春に落馬し、復帰まで1年以上を要した大怪我を乗り越えての戴冠だった。

「パフォーマンスを出し切れば、絶対に負けない」

 まさに一分の隙もない、完璧な勝利だった。

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 パドックに姿を現したときから、クロワデュノールは「王者」のオーラをまとっていた。首を低くしてまっすぐ前を見据え、ゆったりと歩を進める。しなやかさ、力強さ、落ち着き、適度な気合――と、大舞台を制するために必要なすべてを持っていることが伝わってきた。斉藤調教師はこう振り返る。

「皐月賞に比べ、トレセンにいるときからいいと思っていたのですが、装鞍所に入ってきた感じもすごくよかった。これだけの舞台でお客さんがたくさんいても落ち着いて、精神面の強い馬だな、と。不安なところはなく競馬を迎えられました」

 馬場入りし、返し馬に入る一歩目も実になめらかだった。鞍上の指示をしっかりと受け止め、リラックスしている。北村は、状態は今までで一番いいと感じたという。

「パフォーマンスを出し切れば、絶対に負けないと信じていました。馬を信じて、自分を信じて乗ればいいという思いを抱いていたのですが、跨った瞬間、それが確信めいたものになりました。信じていけばいい、と」

 前日の雷雨の影響で稍重からスタートした芝コースは良馬場に回復していた。

 青空の下でゲートが開き、18頭の出走馬が飛び出した。

 大外18番枠から出たサトノシャイニングが内に切れ込みながら正面スタンド前で先頭に立った。それを1、2コーナーでホウオウアートマンがかわしてハナに立ち、向正面で単騎逃げの形に持ち込んだ。

 クロワデュノールは、ほとんどゲートを出たなりで正面スタンド前を走り、スムーズに絶好位の4番手につけて、何の不利も食らわず、抜群の手応えのまま向正面に入った。

 積極策のお手本のような競馬だ。行きたがって首を上げている他馬もいるなか、折り合いは完璧だった。

【次ページ】 「みんな見てくれ」クロワデュノールを何度も指し示した

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