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錦織圭の4強進出をスタッツで読む!
ワウリンカを凌駕した「2つの要素」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2014/09/04 11:10
日本人が全米オープンでベスト4に残るのは96年ぶり。世界6位のラオニッチに続き4位のワウリンカを下し、いよいよ錦織圭が頂点に立つ日が見えてきた。
勝負を分けた2つの数字、「8分の2」と「8分の7」。
・第4セット この試合がより面白くなったのは、ここからだ。ワウリンカが戦い方を変えたのだ。
第3セット、ワウリンカのファースト・サービスの確率は52%。エースを狙いに行き、フォルトが目立っていたのだが、このセットからスピードを抑えてプレースメント(場所)を重視し始めた。
その結果、ファースト・サービスの確率は67%にまで上昇し、アンフォースト・エラー(自分のミスでポイントを与えること)が少なくなってきた。剛を捨て、柔を選択したのだ。いい戦略だったと思う。錦織としてもなかなかブレークのチャンスが訪れず、結局、タイブレークとなる。
タイブレークではワウリンカが4-0と一気に走ったが、ここから錦織が反撃して流れが行き来する展開となり、テニスの醍醐味を味わうことが出来た。しかし、ワウリンカが押し切り、最終セットへ。
・第5セット 錦織にも苦しい場面はあった。特に第3ゲーム、15-40とブレークポイントを握られた時はどうなるかと思ったが、ここから冷静に盛り返した。
第5セットもワウリンカは極めて保守的にプレーし、確率を重視した戦い方をしていた。その証拠に、アンフォースト・エラーはワウリンカが10本、錦織が11本だった。この試合ではじめてワウリンカが錦織を上回った。
相手のセカンド・サービスと、ネットプレー。
勝負の分かれ目となった数字は、
「8分の2」と、
「8分の7」だ。
8分の2はワウリンカのセカンド・サービス時のポイント。彼の最初のサービスが入らなかった時、錦織は高い集中力を発揮した。
そして8分の7は、錦織のネットプレーの成功率。勝負どころと見てネットに出た場合、確実に錦織はポイントをモノにしている。
相手のセカンド・サービスと、ネットプレー。
勝負どころの判断、そして正確性が錦織のストロング・ポイントなのである。2試合続けて4時間以上戦い、なおこの集中力を発揮するのは並大抵のことではない。素晴らしい戦いだった。
さあ、準決勝が待っている。
もう少し、ワクワクさせてもらおうじゃないか。