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新戦術「ハイブリッド6」で世界2位!
日本女子の挑戦がバレーを変える。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2014/09/01 10:30
ワールドグランプリに出場した全日本女子、190cmを超える選手は一人もいない。アメリカ、ブラジルとの身長差を埋めるには、新たな戦術をものにするしかない。
3つの五輪金メダルは、すべて新戦術によるものだった。
バレーボールは、身長が大きく影響する競技だ。高ければ有利になるし、低ければ不利になる。
日本はどうしても、海外の強豪国と比べると身長が低い。相手によっては、平均身長の差が10cm前後に及ぶ。その差を埋めるさまざまな努力がロンドン五輪では実を結んだが、さらに上に行くには、足りないものがある。
行き着いた答えが、世界のどこもやっていない戦術を生み出し、取り組んでいくことだった。
大会を前にした7月、監督が語った言葉がある。
「これまで3度のオリンピックでの(男女の)金メダルは、すべて新戦術で獲得しています」
1964年、東京五輪の女子は回転レシーブ、1972年に行なわれたミュンヘン五輪の男子は時間差攻撃、1976年、モントリオール五輪の女子はひかり攻撃といった具合に、過去の栄光は、常に新しいバレーとともにあった。その歴史に触れた言葉には、身体能力を埋める活路は、やはり戦術にしかないという思いがあった。
4人のアタッカーに、相手が的を絞りにくくなる。
そもそも日本の場合、ミドルでの得点が常に低い傾向にあった。であれば、ミドルブロッカーを2枚置くことにこだわらなくてもいいのではないか――。
新戦術を披露した大会では、早速多彩な攻撃が見られた。4人のアタッカーが攻撃の構えを取ることで、相手が的を絞りにくくなっている場面も何度もあった。活躍した1人、ウイングスパイカーの長岡望悠が、打つ位置を問わずにスパイクを決め、セッターの宮下遥がセンターブロックに飛ぶ。そして、2位という過去最高の結果を残せた。
たしかに、ロンドン五輪金メダルをはじめ屈指の強豪として君臨するブラジルにはかなわなかった。とはいえ、今までにない戦術に取り組み始めてからの日は浅い。浸透し切れていないところもあれば、成熟していないところもあるだろう。チャレンジは始まったばかりだ。