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岡田武史、東北での支援活動を語る。
「サッカーで元気に」を超える力を!
posted2014/08/22 10:50
text by
Number編集部Sports Graphic Number
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(C)EXILE CUP実行委員会
忙しいスケジュールの合間を縫いながら行っている支援活動だが、震災当時とはまた異なる悩みや喜びが出てきているという。
日本代表チームを率いて世界の頂点を目指した男が、被災地支援活動で目にしてきたものは、果たして何だったのか? 真摯な気持ちを、そのまま独占告白という形で語ってもらった。
先日、盛岡近郊で久しぶりにサッカークリニックを開いた。2012年から2年間務めた中国のクラブの監督を離れ、ここ最近は大きな声を出していなかったので後半はほとんど声が出なくなってしまったけど、子どもたちの生き生きとした笑顔に触れてとても楽しい時間を過ごすことができた。
最初は硬かった40人くらい集まった小学生の表情が、一緒にドリブルをしたり、競争をしたり、最後にゲームをしていくなかでどんどん解放され、大きな声が出るようになっていく――これこそ、サッカーのパワーだ。
あいにくの雨だったが、天気なんて関係ない。子どもたちの笑顔を見て周りの大人にもまた次々と笑顔が生まれていく。誰もがこの先の未来へと進んでいくことができるのではないか、と思えてくる。
子どもと一緒になってグラウンドを走り回りながら、遠くに走る東北新幹線の姿に3年前に岩手県を訪れた時のことを思い出していた。
子供の笑顔に、希望の光を見出した瞬間。
東日本大震災の後、僕がはじめて被災地に足を踏み入れたのは震災から3週間ほど経った時だった。もちろんまだ新幹線は再開されておらず、車で東北へと向かった。
震災直後の映像を見て、いてもたってもいられずに「自分にも何かできることはないか」と、早々に被災地に入って支援活動をしている友人に声をかけていたのだが、もう少し日が経たないと何もできない、という状況だった。連絡を取り続け、4月になった頃にようやく子どもたちにサッカーを教えてくれないか、と声がかかった。
当時はまだ避難所のグラウンドが空いていたので、ジープにサッカーボールを積んで日ごとに違う場所に向かい、サッカーをしたことがない子どもたちも交えてグラウンドでボールを蹴った。
これは当たり前ではあるのだが、避難所でサインをしたり写真を一緒に撮っても、なかなか大人たちは“本当の”笑顔にならない。
「難しいな……」
最初はそう感じていたのだが、グラウンドでサッカーをして盛り上がってくると、70歳くらいのおばあちゃんが「私も入れてください」と飛び入り参加してきた。いきなりのヘディングに周りの子どもたちがわっと一気に盛り上がり、避難所にいた方たちもみんな外へ出てきて、その光景を見ながらそれぞれ最高の笑顔を見せるようになっていた。
「ああ、先の希望が見えない時こそ、子どもたちの笑顔が人間の希望になるんだ。子どもたちの未来が、大人たちにとっても未来の絵図なんだな」
子どもの笑顔が持つパワーを感じた瞬間だった。