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楽しいと同時に恐ろしさすら感じる。
大谷翔平の早送りのような成長度。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/07/17 10:30

楽しいと同時に恐ろしさすら感じる。大谷翔平の早送りのような成長度。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

7月5日に20歳の誕生日を迎えた大谷翔平。7月15日時点で、投手として8勝1敗、打者として打率2割8分を記録している。

ルーキーの田中将大は力んで勝負していた。

「ギアを上げる」といういい方は去年の田中将大の投球ですっかり定着した感があるが、走者のいない時やリードしている時、力の劣る下位打線を相手にした時などに投手がややセーブした力の使い方をすることは昔からよくあった。江川卓など、「手抜き」とさんざん批判されたものだ。

 去年の田中の「ギアを上げる」投球も、考えてみれば一種の手抜き、長いシーズンやチームのリリーフ事情などを考えたペース配分なのだが、ルーキーの年や2年目の田中にはそういう投球は見られなかった。むしろ力んでストレート勝負を挑み、走者を出すような「若気の至り」が目立った。今でも忘れないのは、初完投勝利のとき、最後の打者をストレートで三振に仕留めようと力んでてこずり、勝ったあと、野村克也監督から頭を小突かれた場面だ。

力押しと変化球を使い分ける心憎いほどの図太さ。

 ところが、大谷は、意識しているのかいないのか、この「ギアを上げる」投球をいつの間にか身につけていた。

 ライオンズの試合でいえば、ストレートの球速は150km台前半が多かったが、走者が得点圏に進んだり、中軸を迎えるときはそれが157km、158kmまで上がった。

 走者二塁の場面は5度あった。そのうち2度はエラーと内野安打で失点したが、残りのうち2度は中軸を迎えて「ギアを上げて」乗り切った。1回の1死二塁では栗山を空振り三振、中村をファウルフライで片づけた。立ち上がりのピンチをそつなく切り抜けたのも2年目らしからぬ投球だったが、さらに鮮やかだったのは6回の無死二塁の場面。栗山に二塁打を許して、中村、メヒア、木村と対した。中村、メヒアには150km台後半のストレートで押して三振とセンターフライ。6番の木村にも、ストレートで勝負を挑むかと見ていたら、なんと3球つづけて変化球を投げ、完全に裏をかかれた木村は空振りの三振に倒れた。このピンチを鮮やかに切り抜けたことが、つぎの回の味方の逆転を呼んだといってもよい。

 中村、メヒアへのストレート中心の投球は理解できる。しかし、強打者を打ち取ったストレートを使わず、変化球だけでパワーのある木村を打ち取った投球は心憎いほどの図太さだった。

【次ページ】 多い三振と少ない四死球は老成の証。

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