野球善哉BACK NUMBER
「つなぐ」も「決める」も自由自在。
西武・渡辺直人、2度目の充実期。
posted2014/07/14 16:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Nanae Suzuki
「甦り」
そういっては失礼だろうか。
西武の渡辺直人が見事な復活劇を見せ、開幕から大きく出遅れたチームをけん引している。田辺監督代行が指揮を執るようになってからは主に2番で起用され、「直人さんが2番に入ってチームが上向いた」とキャプテン・栗山巧が話すほどチームに流れを呼び込んでいる。
渡辺直人の活躍が素晴らしいのは、その総合的な貢献度の高さだ。時につなぎに徹し、時に勝負を決めるポイントゲッターになる。場面に応じて姿を変えることができるのは、彼の7年のキャリアがバックボーンになっているのだろう。
「基本は、アウトになってもいいからいい形で次につなぐこと。特に2番の時は、3番4番の栗山や中村が気持ちよく打席に入れるような形を作ってあげようと思って打席に立っています。
例えば、1番の秋山が早めに打つタイプなので、自分もそこで早く打つのではなく、じっくり見に行く。送りバントを決められるのは当たり前で、その場面に応じたバッティングを心がけています。後ろの打者に多くの打点をつけることが、自分の仕事だと思っています」
つなぐかと思うと、突如として牙を剥く。
その一方、7月8日のロッテ戦では、サヨナラ適時打を放って一躍ヒーローに躍り出た。
延長12回。1点を失った後の苦しい場面だった。1番・秋山の適時打で追いついて、1死・二塁。一塁も空いている中、渡辺はカルロス・ロサのストレートを一閃、左中間を破ったのだ。
これが今季の渡辺の怖さといっていい。つなぐだけの打者と思わせつつ、突如として牙を剥く。この場面で渡辺が打つとしたら、右方向へおっつけての適時打がイメージできたが、相手バッテリーが力でねじ伏せにきたところをガツンと力で左中間へ跳ね返した。
「ああいう場面で一番良くないのは、小細工に走りすぎて、振り負けること。(カルロス・ロサは)ストレートに力があったんで、思い切り振りに行った」