ブラジルW杯通信BACK NUMBER
日本代表の監督選びが難しい理由。
そして監督よりも大切な“体制作り”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2014/07/15 10:30
2010年の南アフリカW杯で、メキシコを率いてGLを突破したハビエル・アギーレ。彼の手腕に期待するのもさることながら、日本サッカーの進化のために協会ができることはまだまだあるはずだ。
「世界から招聘」路線は、いつまでもは続けられない。
アギーレは、メキシコ代表の指揮官としてW杯で2度ベスト16に進出した実績を持つ。クラブシーンでも、アトレティコ・マドリーやエスパニョールの監督を務めている。エスパニョールを5月に退任してフリーの立場である、などの条件もマッチして、日本は交渉を本格化させることができた。彼には資金力のあるカタールからもオファーが舞い込んでいるようだが、日本が本命であることは間違いない。
前回、今回と監督選びを眺めてみて思うのは、世界で活躍する指導者を連れてくることがいかに難しいか、である。
日本がW杯で好成績を収めたりすれば関心の度合いも違ってくるだろうが、一流中の一流の監督になってくれば、年俸150万ユーロ(約2億円)程度の条件では呼べない可能性が出てくる。それにたとえ招聘に成功したとしても、欧州や南米とは文化も言葉もまるで違う。蓋を開けてみたら「合わなかった」ということだってあり得る。
要するに「世界から招聘」路線は、いつまでも続けられるものではないという気がしてならない。アギーレが成功を収めてくれれば路線の正当性は認められるが、Jリーグの価値を高める意味でも、Jクラブで結果を出し、なおかつ日本サッカーの方向性と合致するなら、イビチャ・オシムのようにJリーグから候補者を選ぶほうが自然なのではないだろうか。
日本人監督に目を向ける時期が来たのではないか。
そしてもう一つ。そろそろ日本人監督に目を向ける時期が来たのではないか、というのも強く感じることだ。
Jリーグの監督では、サンフレッチェ広島を2連覇に導いた森保一監督や、川崎フロンターレの風間八宏監督らの評判が高い。また、日本代表を率いて2度W杯を戦った岡田武史監督も「W杯や欧州でのプレー経験を持つ選手たちが、これからは指導者として出てこないと」と語っていたことがある。'98年フランス、'02年日韓、'06年ドイツを経験した選手たちの中には、現役を引退して指導者の道を志している人も多い。そういった若い人材をどう育てるかも、喫緊の課題である。
W杯歴代優勝国の監督が全員母国出身者であることはもはや周知の事実だが、今回のベスト4も母国人の監督が率いたチームが揃った。国のサッカーの歴史や背景、文化、言語などの問題を考えても、その国の指導者が率いることがベストだとW杯の歴史は教えてくれている。