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大学選手権のドラフト候補20人。
創価大・田中正義の直球がすごい!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/06/23 10:30
全日本大学選手権で、創価大5年ぶりの4強進出の原動力となった剛腕投手・田中正義。現在行なわれている大学日本代表選考合宿にも追加招集されており、24人の枠を争っている。
野球は「晩成」が許されるスポーツである。
大学と言っても野球エリートが多く占める東京六大学リーグ、東都大学リーグは狭き門で、球児の多くは地方の大学リーグに進む。ここで重要なことは、野球は中学野球のエリートが高校野球で必ずしもスーパー球児になるわけではなく、同じように超高校級が大学球界で必ずしもドラフト候補になるわけではない、ということだ。野球は「晩成」「遅咲き」が許されるスポーツで、とくに投手にはそういう傾向がある。
'95年以降の過去20年間、東京六大学、東都リーグ以外で大学選手権に優勝したのは'97、'98年=近畿大、'01年=東海大、'03年=日本文理大、'04年=東北福祉大、'06年=大阪体育大、'13年=上武大、'14年=東海大の7校で、そこには華やかな高校球児としての球歴こそないが、大学で花を咲かせた大器晩成型投手の名前が散見できる。
たとえば'01年に優勝した東海大・久保裕也(巨人)がそうだし、'04年に優勝した東北福祉大・福田聡志(巨人)、'10年に準優勝した東海大・菅野智之(巨人)もそういう選手である。そして、地方リーグの活躍が目立った今年の大学選手権でも、無名の高校時代を過ごした本格派投手の活躍が目立った。
ストレートに関しては、田中正義が最も魅力的。
私が最も魅了されたのは1回戦で佛教大、2回戦で亜細亜大、準々決勝で九州産業大を破る立役者になった創価大の2年生エース・田中正義である。今大会の田中の投球は圧巻だった。現在の大学球界には有原航平(早稲田大4年)、山崎福也(明治大4年)、石田健大(法政大4年)、山崎康晃(亜細亜大4年)など、4年生を中心に好投手が揃っているが、ストレートに関しては田中に最も魅力がある。
たとえば、アマチュアナンバーワンの評価がある有原のストレートはチェンジアップを交えることによって冴えを見せるが、ストレートだけで打者を打ち取る迫力はまだない。今年見た中で最もよかった5月17日の明治大戦を振り返ると、7奪三振のうち4三振の決め球はチェンジアップだった。ストレートで奪った三振は2、7、8回に1個ずつあるが、後半の2つはそれまでチェンジアップをたっぷり見せられた打者の裏をかく配球で奪ったものと言っていい。7回、2死三塁で打席に立った真栄平大輝などは“まさかの”3球勝負でストレートを続けられ、空振りの三振に倒れている。