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大学選手権のドラフト候補20人。
創価大・田中正義の直球がすごい!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/06/23 10:30
全日本大学選手権で、創価大5年ぶりの4強進出の原動力となった剛腕投手・田中正義。現在行なわれている大学日本代表選考合宿にも追加招集されており、24人の枠を争っている。
田中が緩急を使いこなすようになったら……。
緩急はピッチングの王道で、チェンジアップを決め球にする有原は称賛こそされ誹謗されるいわれなどどこにもない。「完成度」という物差しで測るなら、依然としてアマチュアナンバーワン投手は有原と言っていい。しかし、有原のチェンジアップのような絶対的な変化球を手に入れたら、田中の攻略は有原以上に難しくなるだろう。
あえて「たら・れば」で2人を比較したのは、田中の変化球が悪くないからだ。100km台のカーブ、130km台中盤の縦に割れるスライダーとフォークボールは“2年後のドラフト1位候補”の名に恥じないだけのキレ味を備えている。
しかし、使用頻度が低いので観賞用としては見応えがあっても実戦のボールとしては物足りなさがある。もし緩急に価値を見出すようになったら田中はどれだけ凄い投手になるのか、それを言いたいがためにあえて有原との大物比較を試みた。
プロには存在しない、「ストレート率73%」。
田中はどのくらいストレートが多いのか、大学選手権3試合を振り返ってみよう。
完封した1回戦の佛教大戦は117球中90球で77パーセント、ともにリリーフした準々決勝の九州産業大戦は73球中52球で71パーセント、準決勝の東海大戦は40球中27球で68パーセント、合計3試合のストレートの占有率は73パーセントだった。
『プロ野球スカウティングレポート2014』(廣済堂出版)によれば、プロでストレートの占有率が高い先発投手は、大野雄大(中日)64パーセント、三嶋一輝(DeNA)60パーセント、菊池雄星(西武)59パーセントあたりで、70パーセント以上という中日のカブレラ1人に限られる。田中のストレートに対する思い入れがどれくらい強いかわかる。
ちなみに、リリーフした2回戦の亜細亜大戦で、私は7回以降の3イニングだけ1球ずつスコアをつけたのだが、46球中ストレートは26球(57パーセント)だった。前出の3試合にくらべて変化球が多かったのはそれだけ亜細亜大から受けたプレッシャーが強かったということだろう。参考記録として記憶にとどめてほしい。