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17打の大差を生んだ小さな「何か」。
松山英樹、全米OPの敗因を探る。
posted2014/06/16 16:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
全米オープン開幕前、マーチン・カイマーはパインハーストで4日間を戦い終えたときの自分のスコアは「8オーバーぐらいになる」と予想していた。
だが、初日も2日目も「65」をマークし、予選2日間の最少スコア記録を更新しながら単独首位を独走。「予想は大外れだ。あれはもうさすがに起こりそうもないよね」と、うれしそうに笑った。
3日目こそ「72」と初めてオーバーパーを喫し、スコアの上ではやや足踏みをしたものの、2位と5打差からスタートした最終日は「69」と再びレッドナンバーを叩き出し、終わってみれば通算9アンダーで2位に8打差を付け、ドイツ人ながら米国のナショナルオープンを圧勝した。
カイマーのスコア予想が外れたことは、小さな狂い、うれしい狂いだったに違いない。だが大きいか、小さいか、うれしいか、うれしくないかはさておき、全米オープンのごときメジャーの舞台では、何かが狂うことはしばしば起こる。
大会前、「フツウ」を連発していた松山英樹。
大きな狂いならわかりやすいから、むしろ対応もしやすいかもしれない。が、狂いや変化が小さければ小さいほど、気づかなかったりしてしまいがちで、気づいたときには手遅れになっていたりする。今年の松山英樹の全米オープンは、そんな流れに流されながら、あれよあれよと言う間に過ぎ去ってしまった感がある。
松山は開幕前から「いつも通りの松山」を保っていた。わずか2週間前にザ・メモリアル・トーナメントで米ツアー初優勝をとげたばかりで、周囲からは「次はメジャー制覇」を期待され、彼自身も「次はメジャーで勝てるよう頑張りたい」と語っていたけれど、だからと言って、力んだり気負ったりしている様子は見られなかった。
「フツウに練習して、フツウに、今まで通りやればいい」
松山がそんなふうに「フツウ」を連発するときは、平常心を保っているときだ。フェアウェイの両サイドに広がるラフの代わりの砂地についても、他選手たちがあれやこれやと攻略法や対策を示したり語ったりする中で、松山は「入れなければいいだけの話」と、まるで取り合わず、飄々としていた。