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村田諒太、4連続KO勝利で出た結論。
技術よりも「倒しにいく力」で世界へ!
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2014/05/23 11:10
5月22日の勝利で、プロ入り4連続KOとなった村田。「五輪金メダリストである以上、世界タイトルは必ず取らなければいけない義務」と言い切った村田の世界挑戦は、早くて来年末くらいだという。
「ザ・プロ」の戦い方に徹した相手を冷静に料理。
試合運びにもプロらしい冷静さを感じさせた。初回にネリオを3度、4度とロープに詰めたとき、試合は早々に終わるとだれもが思ったに違いない。ところがボクシング大国メキシコからやってきた25歳にも意地とプライド、そしてキャリア相応のしたたかな技術があった。
ネリオは2回からあらゆる手段を使って抵抗を試みた。攻撃は最大の防御とばかりに手数を増やし、そのまま頭をベルトライン付近まで下げ、すかさず懐に飛び込んではクリンチに打って出た。汚いと言われようが構わない。村田曰く「ザ・プロ」の戦い方だった。
ネリオの戦績は15戦して12勝6KO3敗。世界ランカーとの2戦はともに敗れているから、一流とはいえない中堅選手である。ただし中堅選手といえども、このような手段に出たボクサーをKOするのは難しい。
最悪のケースはノックアウトを急ぐあまり、自らのボクシングを崩してしまうことだ。しかし村田は冷静に一発では仕留めることが難しいボディブローとジャブを上下に散らし、しっかりプロセスを踏んでやりにくい曲者をKOした。これも小さく見えて、なくてはならない進歩だと言えるだろう。
「体の強さ、パンチの強さがストロングポイント」
村田の明確な意志―─。
試合前の記者会見で、村田はこの日のパフォーマンスを予感させる発言をしていた。4月から5月にかけて行った恒例のラスベガス合宿の成果を問われたときである。村田は「実戦練習がメイン」と回答したあと、次のように続けた。
「ラスベガスで気がついたことがあった。自分のストロングポイントは体の強さ、パンチの強さ。技術が求められるのはもちろんだけど、倒しにいくのが自分の売りであり、ファイターというスタイルが自分の武器だと思う」
村田は昨年4月、プロ転向を表明してからさまざまな試行錯誤を繰り返してきた。まずはアマチュアスタイルの脱却からスタートし、当初は「バランス」というテーマを繰り返し口にしていた。ガード一辺倒だったディフェンス技術の幅を広げることや、上体を柔らかく使うこともテーマだった。
2戦目で苦戦を強いられたあとにはジャブの重要性を身に染みて知った。この間、自らさまざまな情報を仕入れたり、いくつものアドバイスが耳に入った。思い悩みながら試行錯誤を繰り返し、ベストのスタイルを探し続けた。そして村田は第4戦を前に、自分が進むべきおおよその方向、軸とするボクシングスタイルに一定の結論を得たのである。