ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
ボクシング興行を続けることで男は何を損なったのか?
~『浪速のロッキーを<捨てた>男』~
text by

幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byRyo Suzuki
posted2014/06/01 10:30
『浪速のロッキーを<捨てた>男 稀代のプロモーター・津田博明の人生』浅沢英著 KADOKAWA 1700円+税
「必ず世界チャンピオンになれる、連続KOの物凄いボクサーがおるんです」
それが、津田博明の売り込み文句だった。大阪の西成の下町で、タクシーの運転手をしながらボクシングジムを興し、のちに井岡弘樹、山口圭司、高山勝成という3人の世界チャンピオンを輩出したグリーンツダジムの創始者、津田博明。彼の評伝でありながら、ボクシングの裏側にある過酷な現実、そして、それを「プロモート」することが、どんな富やリスクや痛みを伴うのかをあぶり出す傑作が誕生した。
津田博明をボクシングの檜舞台に連れ出したのは、さして期待されていなかった不器用なボクサー「浪速のロッキー」こと、赤井英和だった。そう、あなたが俳優として知っている彼である。
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