セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエA得点王をかけた3人の戦い。
新星、大ベテラン、そして野生児。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/05/14 11:30
ドルトムントへの移籍が有力視されるインモービレ。トリノの会長は放出の意志はないと公言しているが、果たして……。
「可愛い子ちゃんたちとバカンスに行くさ」
もともと遅咲きのキャリアだったが、'06年に欧州最優秀FWの証である「ゴールデンブーツ賞」を獲得し、ドイツW杯でも優勝の栄華を味わった。バイエルンやアル・ナスルなど国外経験も重ねたが、ここ数年は単年契約で渡り歩く不遇のシーズンが続いた。
復活を遂げたベテランFWの代表復帰を願う声が、ベローナ界隈から湧いたのも無理からぬ話だ。ただ、サッカー界の酸いも甘いもかみ分けたトーニは、代表復帰について達観している。
「4月の予備合宿のときに、自分も(ローマで好調の)トッティも呼ばれなかったということは、本番でも招集しないということさ。プランデッリは代表監督として、一つの選択を下したんだよ。シーズンが終わったら、僕の可愛い子ちゃんたち(=妻と娘の意)とのんびりバカンスに行くさ」
ユーベの3連覇を牽引したテベスだが……。
ブラジルW杯では、テベスという大物も見られない。
“メッシ・システム”を戴くアルゼンチン代表に、野生児テベスの居場所はない。プラティニとバッジョ、デル・ピエーロの背番号10を受け継いだテベスが、どれほどゴールを重ねようと、代表監督サベージャはテベスの存在を無視し続ける。
敵地で先制された35節サッスオーロ戦で、テベスは同点弾を叩き込み、ユーベの反撃を告げる狼煙を上げた。見事3-1で逆転勝ちし、スクデット3連覇を大きく手繰り寄せた後、テベスは代表監督を皮肉るように、快活に言い放った。
「サベージャの家じゃ、(海外の試合を見る)衛星放送に入ってないんだろうな」
3連覇を果たしたユベントスの偉業を伝えたイタリア各紙は揃って、シーズンMVPをテベスに与え、その働きを絶賛した。テベスこそ3連覇への原動力だった。
シーズン開幕当初、2連覇達成後の気の緩みを引き締めたのも、加入したばかりのテベスだった。開幕戦での泥臭い決勝ゴールに始まり、地方クラブとの対戦でも手を抜かず、体を張ってゴールを狙い続けた。26節ミラン戦での弾丸ゴールも記憶に強い。テベスは自分も走り、周りも走らせる。
「俺はユーベの10番という、何かとてつもなく重いもんを背負ってる。今シーズン、俺はいつだって真剣にやってきた。だが、優勝できたのも、点を取れたのも、チームメイトたちのおかげだ」
南米2大国でそれぞれ優勝した後、イングランドでも戴冠し、イタリアをも制した優勝請負人テベスは、19ゴールでインモービレを追う。彼の年間パーソナルレコードは、シティ時代に記録した23得点だ。