サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER

留学も就活もなげうって……。
目指せ、地獄のサハラマラソン!! 

text by

松山貴史

松山貴史Takashi Matsuyama

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photograph byTakashi Matsuyama/Sports Graphic Number

posted2011/01/21 06:00

留学も就活もなげうって……。目指せ、地獄のサハラマラソン!!<Number Web> photograph by Takashi Matsuyama/Sports Graphic Number

「地球上で最も過酷なアドベンチャーマラソン」って?

 昨年6月、近所の本屋で1冊の本に出会う。『7日間で人生を変える旅』。

 自己啓発本ではなく、1週間で行ける楽しい旅行プランをたくさん載せたものだ。その本の番外編でサハラマラソンの存在を知り、ビビっときた。

    ・「地球上で最も過酷なアドベンチャーマラソン」
    ・7日間でフルマラソン5回半。(約230~250km)
    ・ルール「全てを背負って走る」
    ・参加費48万円
    ・開催場所:モロッコ(サハラ砂漠)
    ・期間:3/30~4/11
    ・主催国:フランス

 サハラ砂漠をひたすら走る。しかも1週間分の食料、寝袋等を背負って。支給されるのは水だけで、衣食住の全てをバックパックに担いで走るらしい。全てを背負うって何か格好いい。サハラ砂漠は、一日の寒暖差が5~50℃もあるらしい。 そして250kmを耐え抜く脚力。 相当にハードだ。

 この時期、自分は何が出来るのか、自分にしか出来ないことって何なのか? みたいなことを何故か考えていた時期で、「もしかしたらサハラマラソンなのでは……」と考えは飛躍した。

 大学入学時の浪人等々の巻き返しに必死だったのだろう。高校時代までの同期の大半は社会人やっているのに、自分はいつまで学生しているんだという焦燥感。迫ってくる就職活動に対しても、具体的に未来の自分をイメージ出来ず……。どうしたらいいのか。

 それらを取り返す何か大きいことをしようと考えていて、その候補には例えば国Ⅰ(国家公務員Ⅰ種試験)、公認会計士を受けるとか、世界一周するなど色々あった。でも勉強は苦手で、世界一周はお金さえあれば誰でも出来る。あとここ数年努力してない気がしていて、何かとてつもなく努力を必要とすることをしたかったのだ。

「最大の満足を得るには、ある程度のリスクを負わないといけない」

 脚力に関しては毎日10km走れば約6カ月後には2000kmで、まぁ何とかなるだろうという、よく分らない試算が自分のなかにはあった。今考えると謎である。

 だらだら考えているうちに夏休みを迎え、短期留学でドイツへ行く時期になった。日本では自由な時間が無い生活を送っていたため、色々なことを考える時間が全くなかった。

 ドイツに滞在していたときは暇すぎて、日本の本を読んだりするくらい贅沢に時間を使った。のんびりとした時間の中でサハラについて考えていたら、ますます行きたくなり、そしてヨーロッパではかなり人気のレースだということを知った。

 当時スペインに彼女もいたから、スポンサーが付けばあわよくばサハラの帰りにでも安く会いに行けるのではとも考えていた(ちなみにもう別れています……)。

 こうなってくると完全に押せ押せムードである。日本企業の就職活動の試験は、基本的に4月1日スタートだ。その最も重要な時期にサハラ砂漠にいるのは、就職活動的観点からすると自殺行為に他ならない。だが、誰かがこんなことを言っていた。

「最大の満足を得るには、ある程度のリスクを負わないといけない」

 ある程度で済むのか……という疑問はありつつも、「行かずに後悔するより、行って後悔しよう。すでにある程度レールから外れているさ」と考えた。

【次ページ】 サハラマラソンへの挑戦を後押しした、妙な学生寮。

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