サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER
留学も就活もなげうって……。
目指せ、地獄のサハラマラソン!!
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byTakashi Matsuyama/Sports Graphic Number
posted2011/01/21 06:00
サハラマラソンへの挑戦を後押しした、妙な学生寮。
費用に関しては、最悪、短期留学から帰ってから馬車馬のように働けば何とかなるということで、「和敬マラソンで5位以内に入ったら参加しよう」と決意する。
ここで今自分が所属する「和敬塾」という大学生が入る寮のことを説明しないといけない。この寮を一言で表すと「体育会系じゃない人が体育会みたいなことをする場所」だろうか。上下関係はとてつもなく厳しく、入塾が1日でも早ければその人を神様のように崇めないといけない。もの凄く時代錯誤な感もあるが、所謂古き良き時代の人間関係を体験できる「道場」なのではないかと思っている。ちなみに村上春樹の『ノルウェイの森』に出てくる寮はうちの寮だそうだ。
そもそも自分がこんなにマラソンに関して自信を持てるようになったのも、この寮のせいだ。昨年、先輩の一人が「フルマラソン走りたい」と言い出し、無理やり付き添いで連れていかれて走らされる羽目に。こんなことは日常茶飯事である。当初フルマラソンなんていうものは恐怖でしかなかったが、蓋を開けると意外と走れてしまった。このことで根拠のない自信がつき、サハラのエントリーに踏み切れたのだと思う。
暴漢に襲われても、台風の日も、とにかく毎日走る。
そして年に一度、体育祭という行事があり、その競技の中にはマラソンがある。ちょっとおかしな経歴を持つ600人の塾生のなかで5位以内に入るには相当なトレーニングが必要。夏、マラソン大会に向けてライプチヒにてトレーニングを開始し、以後毎日走る。一度、ライプチヒで暴漢に追われた。帰国後も毎日走る。台風の日も勿論走る。
そしてなんとか和敬マラソンで3位に入った。ごく身近な場所で行われる大会とは言え、一応体力面に関してはさらに自信がついた。エントリー直前に一応、兄には相談した。
兄 「期間は?」
自分 「3月末から4月中旬」
兄 「有給とれんな……」
お前も出たかったのか!
ちなみに、サハラマラソンのことを相談して、このような対応をしてくれたのは周囲では兄だけだった。家庭環境から問題があったのか。