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無敗馬、外国産馬、中距離血統……。
大混戦の皐月賞を獲得賞金から読む。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/04/19 08:00
休み明け初戦のスプリングSではロサギガンティアの2着と初めて土をつけられたが、皐月賞では2歳王者の実力を発揮できるだろうか。
ハープスターにしか負けていないイスラボニータ。
総賞金1億451万円と、僅差で2番目に多く稼いでいるのはイスラボニータ(父フジキセキ、美浦・栗田博憲厩舎)だ。この馬は、新潟2歳ステークスでハープスターに3馬身差をつけられて2着に負けたがゆえに、ハープスターの強さを示すための尺度として語られることが多い。が、5戦して負けたのはそのレースだけで、メンバーでただ一頭重賞を2勝している。父フジキセキ、母の父コジーンという短いところでよさの出る血統からして、ダービーよりここのほうがチャンスが大きい。最も皐月賞向きの馬、という感じがする。
8970万円と、3番目に賞金を稼いでいるのはトゥザワールド(父キングカメハメハ、栗東・池江泰寿厩舎)だ。新馬戦でバンドワゴンに6馬身ちぎられたが、未勝利、黄菊賞、若駒ステークス、弥生賞と破竹の4連勝。鞍上はハープスターの主戦でもある川田将雅という点でも勢いを感じる。1番人気はこれかもしれない。
無敗馬トーセンスターダムの気になる勝ち方。
賞金から離れて別の視点から見て、ぱっと目につくのは唯一の無敗馬トーセンスターダム(父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)だ。トゥザワールドをちぎったバンドワゴンを前走のきさらぎ賞できっちり差し切った走りには、底知れぬスケールを感じさせる迫力があった。ただ、主戦の武豊は、「デビューからずっとダービーを意識して乗ってきた」と話している。小回りで直線の短い中山より、広くて直線の長い東京でこそ気持ちよく末脚を伸ばせるタイプだ。
それに、3勝とも2着とタイム差なしの決着というのも気になる。武が完璧に乗ってあの差だったので、何か不利があったりした場合、それをカバーできる余地がほとんどない、ということになる。その余地がひろがるのは、舞台が東京芝2400mのダービーになってからのような気がする。
イスラボニータ同様、いかにも皐月賞向きという感じがするのが、昨年のラジオNIKKEI杯2歳ステークスを制し、休み明けの弥生賞で2着に突っ込んできたワンアンドオンリー(父ハーツクライ、栗東・橋口弘次郎厩舎)だ。コーナーを回りながらスパートし、直線に入って手前を替えてからさらに加速するこの馬の「2段スパート」は、小回りコースでこそ威力を発揮する。ゴールドシップなどと同じタイプである。