野球善哉BACK NUMBER
浅村栄斗の打点王獲得は“意外”。
高校時代からのムラが消えた理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/12/06 10:30
今シーズンは打率5位、本塁打4位、そして打点王と三部門で上位に入った浅村栄斗。足も速く、いまだ23歳という若さもさらなるスケールアップを期待させる。
華はあっても、集中力に難があった高校時代。
それは、浅村本人も認めている。
「僕はプロに入る時に1番を打ちたいと思っていました。だから、僕がタイトルを獲るとしたら、最多安打とか、首位打者、トリプルスリーをイメージしていました。打点王は、自分の中に(イメージとして)持っていなかったですね」
では、なぜ、彼は「打点王」を獲得できたのだろう。
浅村のこの言葉を聞いたとき、ふと彼の恩師である大阪桐蔭の西谷浩一監督の言葉を思い出した。西谷監督は、浅村の能力を認めつつも、彼にあった難癖をこう説明してくれたことがあった。
「浅村にはお兄ちゃんがいて、うちの選手でした。ものすごい努力家だったんです。でも、弟の方は正反対。プレーに華があるんですけど、ポカが多い。根気がなく、集中力がない。だから、いい時が続かないんです。入学当時では、スーパースターになるような選手じゃなかったです」
事実、1学年上の中田翔を擁して'07年のセンバツに出場したとき、2年生だった浅村は、ベンチから外れている。前年の秋にベンチ入りしていたにもかかわらず、横着でプレーが軽かった浅村は、指揮官の構想からは外れていたのである。
ショートにキャプテンがいて、レギュラーを諦めていた。
再び、西谷監督の回想である。
「当時、ショートを守っていた選手がキャプテンを務めていたんです。それで、浅村は、自分はレギュラーになれないと決めつけて諦めていました。僕は、キャプテンだからといって、レギュラーを確約したりはしていなかったので、そのことはセンバツが終わった後に言いました。
『そんな気持ちでやっているから、メンバーに入れないんだ。キャプテンをレギュラーとは決めていないし、キャプテンが試合に出ないといけないと思っていない。それは約束する。だから、本気でキャプテンと勝負してみろ』と。それから取り組む姿勢が少しずつ変わってきました」
浅村には、高いポテンシャルがある一方、集中力の欠如や現状を打ち破ろうとする意識の低さが課題のひとつでもあったのだ。