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浅村栄斗の打点王獲得は“意外”。
高校時代からのムラが消えた理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/12/06 10:30
今シーズンは打率5位、本塁打4位、そして打点王と三部門で上位に入った浅村栄斗。足も速く、いまだ23歳という若さもさらなるスケールアップを期待させる。
それは、敵将からの遠回しの誉め言葉のように聞こえた。
パ・リーグのCSファイナルステージで、ロッテを下した楽天・星野仙一監督は、日本シリーズ進出を決めた試合での田中将大のピッチングをこう表現した。
「“いいバッター”でゲームセットしたいというのが、田中の描いた絵なんでしょうね。(リーグ優勝を決めた)西武ドームの時もそうでしたから」
闘将の発言は、ロッテの井口資仁、そしてリーグ制覇時の相手、西武の最後のバッターとなった浅村栄斗に向けたものだった。
今季もっとも覚醒した選手を挙げるとすれば、浅村栄斗ではないだろうか。
5月29日のDeNA戦で初めて4番に座り、それ以降、シーズンの最後まで4番を務め上げた。打率.317、27本塁打110打点をマークし、自身初めてのタイトルとなる打点王を獲得した。
中村剛也、中田翔という「先輩たち」とはタイプが違う。
チームメイトで大阪桐蔭高校の先輩である中村剛也がチームに復帰しても4番に座り、ライバルチームで、同じく高校の先輩である中田翔(日本ハム)より一足先のタイトルは、本人からしてみれば、喜びもひとしおだったに違いない。
「中村さん、中田さんとはタイプが違うんで、自分らしさを出していこうと思っていました。僕はホームランを打てるバッターではないので、チャンスで打つこと。その中での打点王なので、満足している部分はあります。今シーズンは、自分にはやれる力があるんだ。プロで活躍できることを確認できたシーズンになりました」
浅村は、今シーズンをそう振り返っている。
とはいえ、ファースト・ストライクから積極的に打ちに行くバッティングスタイルには、心地よさを感じるものの、「打点王」というタイトルは、少し意外な気もする。
大阪桐蔭時代の3年夏、「1番・遊撃手」のリードオフマンとして全国制覇に大きな貢献を果たしていた彼のプレースタイルからすると、「打点王」というイメージが重なってこなかったからだ。