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F1はブリヂストンからピレリへ。
2011年の覇権を賭けた新たな戦い。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAndrew Hone/Getty Images
posted2011/01/03 08:00
ピレリがF1で活躍した時期は、第1期1950~1958年、第2期1981年~1986年、第3期1989年~1991年。前回の挑戦から実に20年ぶりの復帰となる
調査のポイントは「コーナーリング中のタイヤの変形量」。
このように同じ黒くて丸いタイヤでも、ブリヂストンとピレリでは大きな違いがある。その中でも各チームがもっとも気にしていたことは、コーナーリング中のタイヤの変形量だった。
現代のF1はコーナーリング中にタイヤがどのように変形しているかまで調査して、それを風洞実験で再現。コーナーリング中にタイヤが変形することで発生する乱流を考慮したエアロダイナミクスを施し、ダウンフォースの減少を最小限にとどめるという非常に高いレベルで空力開発が行われている。
そのため、各チームはさまざまなセンサーを車体に装着してタイヤ周辺の気流データを採取していた。
1日7時間の走り込みで判明したピレリ特有のクセとは?
次に各チームが注意深く観察していた項目は、構造とコンパウンド(ゴム)の性質だった。
適正な温度に達するのにどれくらい時間がかかるのか。空気圧の違いでどのように変化するのか。燃料搭載量の違いによってラップタイムがどんな変化を見せるのか。サスペンションのキャンバー角の変化にどんな反応を見せるのか。重量配分を変えた場合にどんなバランス変化を起こすのか。ロングランでどのようにラップタイムが推移するのか。テスト項目は多岐にわたり、朝9時から夕方5時までランチタイムの1時間を除いて、1日7時間の走り込みが2日間行われた。
その結果、ひとつの重要な結論が導き出された。それはピレリのタイヤはリアタイヤが弱いということだ。ピレリは公表していないが、あるチーム関係者によれば、ピレリのタイヤはリアのみブリヂストンに比べて重量が軽くできているという。その差は一説には1輪あたり2kgもあるという。そのため、リアの変形が大きく、摩耗も激しい。
それを裏付けるようなトラブルが、レッドブルのパンクだった。ベッテルだけがリアタイヤを2日間ともパンクさせているのだ。2010年に最速マシンの称号を得たレッドブルのRB6。その理由はブリヂストンタイヤを100%使い切るマシンだったと言われている。つまり、タイヤを使い切るほど大きいダウンフォースがリアタイヤにかかっていたと推測される。ところが、リアが弱くなったピレリではそれが災いして破損したのではないかというのが、衆目の一致した結論だった。