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吉田麻也の“例え”はスベらない?
『JIN』に、スーツに、ジョブズまで。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byDaiju Kitamura/AFLO
posted2013/11/15 10:30
代表の試合で、内田篤人らチームメイトと談笑する吉田麻也。このコミュニケーション能力は、彼の優れた1つの力であることは間違いない。
“粗着裏”ではなく、サビルローのスーツに。
日本代表、そして欧州でプレーする日本人選手も“本物”を目指す意識をさらに高く持つべき、という話題のときだった。
海外でプレーするだけで満足する時代は、もう終わった。ここからはどこまで世界トップの連中に食らいつき、肩を並べ、さらには越えられるか。そんな考えを語っているとき、吉田が『JIN』のある場面に出てきたモノで、例えた。
「いま『JIN』を観ているんですけど、そこで思ったのは“粗着裏(あらぎうら)”ではダメなんだと。江戸時代に出回った“粗着裏”という着物があって。表の柄だけはきれいで、裏地は粗いというもの。でも本来着物や服は表面、見栄えだけが良くても、裏地が全然しっかりしていなかったら、それはニセモノだと。外地も裏地も良い素材にしていかないと、本物とは言えない。
これ、僕らも一緒だと思う。いまの日本のサッカー選手は、もう海外でプレーしているというだけでは意味がない。欧州で地に足を着けて、しっかり結果を出し続ける。そうでないと本物の選手、集団にはなれない。一流に届きたいのであれば、その意識を持ち続けないといけないと思うんです。
僕もイギリスでプレーしているのだから、現代風に言えば、ロンドンのサビルローで仕立てられる上質のスーツのような選手になりたいんですよ」
一見険しい話を、柔らかく、わかりやすく。
ドラマだけでなく、最後は自身の理想を高級スーツに例えてみせた吉田。ちなみにサビルローとはロンドンにある地名で、高級生地で紳士服を仕立てる由緒正しきテーラーが軒を連ねていることで世界的に有名な街である。日本語でスーツを「背広」と言うが、これは「サビルロー」という発音の響きが転じた結果、生まれた言葉という説があるほどだ。
この例え、聞いた直後は笑ってしまったが、それでも話の筋は通っている。
テーマとしては、現状の自分もまだまだ力不足で、それでも目指していかなければならない世界があるという、一見険しく厳しい話ではある。ただそれを少しでも柔らかく、わかりやすく伝えようと吉田はしていた。やはり、彼は頭の回転が良い人間である。
さらに吉田は自分のサッカー人生について語った際も、例え話を用いた。今度はドラマではなく、サッカー少年だったら誰もが読んで来たであろう『キャプテン翼』だった。