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吉田麻也の“例え”はスベらない?
『JIN』に、スーツに、ジョブズまで。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byDaiju Kitamura/AFLO
posted2013/11/15 10:30
代表の試合で、内田篤人らチームメイトと談笑する吉田麻也。このコミュニケーション能力は、彼の優れた1つの力であることは間違いない。
一つずつ、経験のレベルは確実に上がっていっている。
言わずと知れた、サッカー漫画の名作。いまや世界中に広まり、あらゆる国で登場人物の名前などが現地化されている。現在世界で活躍するサッカー選手のなかにも少年時代に熱烈なファンだったと公言する人も多い。
主人公の大空翼の小学生時代から話は始まり、年齢を重ねてプロになり、世界のトップに向けて羽ばたいていく。一見、漫画の世界ならではのサクセスストーリーに思えるのだが、吉田は実際のサッカー人生も実は同じだと、自らの経験を紐解きながら話していった。
「僕たちサッカー選手の人生は、サッカー漫画と同じなのかなと思うんですよ。大空翼をはじめ、漫画の世界に出てくる彼らは少しずつ相手のレベルが上がっていって、その戦いの中で失敗しながらも、最後は成功する。サッカーというか、他のスポーツも含めて、実際の世界も本当にそのとおりだと思う。
自分だと、まずは名古屋グランパスのジュニアユースに入って、そこで『周りにはこんな上手い奴がいるんだ』と思った。そこから高校生になって、今度は対戦相手のサンフレッチェ広島ユースとか東京ヴェルディユースを見て『森本(現・千葉)ってすごいな』、『平繁(現・群馬)は本当に上手いな』と感じた。その後ユース代表に行って、初めて韓国代表と対戦した時は『同世代なのに体が強いな』という経験をした。
プロになったら、先輩たちを見て『名古屋グランパスにはこんなすごい人たちがいるんだ』と高い壁を感じた。対戦相手の外国人に対しても『ジュニーニョ(現・鹿島)、ワシントン(元・浦和)、半端ないな』と痛感したわけです。
そしていま日本代表に行って、他の代表の選手の能力に驚いたり、さらにブラジルとかと戦っていろんな経験を積んでいる。
一つずつ、僕たちも経験のレベルは確実に上がっていっているんです。その壁を一つずつクリアしていく。本当に漫画と一緒なんです」
サッカーだけでなく、話題の豊富さに触れる。
一足飛びで何かを成し遂げられることなどない世界。まさに一歩ずつ上のレベルを体感、痛感し、自分の能力アップに直結させていく。
それを自分の歴史と照らし合わせ、これまた筋道立てて話していった吉田。今回の取材を通して、彼のプレーに対する考え方だけではなく、こうした純粋な話の展開や話題の豊富さにも触れたことで、あらためて吉田麻也の面白さを再確認することができた。