MLB東奔西走BACK NUMBER
赤字に苦しむ日本球団と何が違う?
史上最高収益に沸くMLBの経営術。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKYODO
posted2010/12/26 08:00
WBCの開催を発表したMLB第9代コミッショナーのバド・セリグ。その手腕と実績への評価は高く、昨季限りの退任が予定されていたが、オーナー会議で契約延長が満場一致で承認され、2012年まで任期が延長された
MLBが観客数増加のために注力してきたエンタメ戦略。
つぎに各球団の経営努力に言及する。
「ファンに定期的に球場へ足を運んでもらうため、我々はファンに楽しんでもらえるように試合結果と天候以外すべてのことをコントロールするようになった。つまりファンに“3時間のエンターテイメント”体験を提供するというコンセプトだ。我々は自分たちがエンターテイメント産業だと考えている。まだ日本ではそういった捉え方をしていないようだが……。
たとえば球場によってはスマートフォン1台あれば、チケットからビール、ホットドッグの購入まで瞬時にできるようになっている。それはホテルや航空会社と同じだ。空席や空き部屋を無駄にしないようにあらゆる努力をする。我々もその努力を惜しまない」
長年メジャーの取材をしてきた身として、スモール代表の言葉にいちいち納得させられる。
マイナーリーグでさえも徹底したファンサービスと経営努力を。
特に理解してほしいのは、MLBのみならずアメリカのプロスポーツ界は、自分たちがエンターテイメント産業の一部であることを強く認識しており、コンサートや格闘技イベント同様、老若男女問わず来場者にその場の空間すべてを満喫してもらえるような企画、演出を徹底しているということなのだ。
例えば、今季途中から松井稼頭央選手が所属していたロッキーズ傘下の3Aコロラドスプリングスは、シーズン途中からチーム成績は下位に低迷し早々にプレーオフ争いから離脱。にもかかわらず、観客動員数(32万8003人)と売上高(非公表)は球団史上最高を記録している。所属する選手の年俸はロッキーズが負担しているというメリットもあるが、その一方でマイナーリーグのためテレビの放映権料は一切入らない。
それでも球団職員わずか20人で、年間のプロモーション活動を作成するとともに、球場の広告や試合中のイベントを支援してくれるスポンサー探しを行い、ファン獲得の地道な努力をしている。
例を挙げると、イニングの合間に行うファン参加イベントの内容を充実させ、毎週末には試合結果にかかわらず試合後の花火大会を定期的に行った。さらに入場者への記念グッズ無料配布もメジャー並みに頻繁に行っている。もちろんメジャーではビジネス/マーケティング部門はさらに充実しており、マイナー以上に地域に根ざした熱心な活動が繰り広げられている。