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グリンキーとヤング・ブルワーズ。
~小球団がMLB屈指の大物獲得!!~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/01/01 08:00
2006年には社会不安障害と診断されながら見事に立ち直った2009年サイヤング賞投手
投手の年に投手の移動が続いている。
クリフ・リー争奪戦ほど騒がしくはないにせよ、またしても大物がトレードされた。
今度の主役はザック・グリンキーだ。
グリンキーはロイヤルズの大黒柱だった。2009年には、16勝8敗、防御率=2.16(30球団中ベスト)、242奪三振(投球回数=229回3分の1)という超絶的な投球内容で、ア・リーグのサイ・ヤング賞に輝いている。
そのグリンキーが、2011年からはブルワーズのユニフォームを着る。
オールスター級の選手を放出してきたロイヤルズの懐事情。
交換相手は、ブルワーズの若手4人だ。遊撃手のアルシデス・エスコバーと中堅手のロレンゾ・ケインはいくらか名を知られた選手だが、残る2投手(ジェレミー・ジェフレスとジェイク・オドリッツィ)はまったくの無名にひとしいマイナーリーガーだ。
トレードの内容については、ま、とやかくいうまい。2000年以降、ロイヤルズは有望選手を育て、スターになった時点で放出するというパターンを繰り返してきた。
2000年のジョニー・デイモン、'01年のジャーメイン・ダイ、さらに'04年のカルロス・ベルトラン。おもに金銭的な理由から、この球団には、オールスター級の選手をあっさりと放出する傾向がある。
グリンキーの場合も例外ではない。
「大リーグを背負って立つ」潜在能力で今が「絶好の買いどき」。
2010年シーズンの彼は、あまり満足のいく成績を残せなかった。とくに序盤がつらかった。先発試合数は年間で33だが、最初の13試合が1勝8敗(防御率=4.05)、後半20試合が9勝6敗(防御率=4.24)、合計して10勝14敗(防御率=4.17)という凡庸な数字しか残せなかったのだ。
ただ、彼の潜在能力は万人の認めるところだろう。少なくとも1年前、グリンキーは、ティム・リンスカムやロイ・ハラデイやクリフ・リーと並んで「大リーグを背負って立つ」名投手にほかならなかった。
逆にブルワーズの側から見れば、いまが「絶好の買いどき」と映ったのではないか。
ブルワーズは若いチームだ。プリンス・フィルダー(26歳)、ライアン・ブラウン(27歳)、コーリー・ハート(28歳)を主軸とする打線の破壊力は、ナ・リーグ中地区ではレッズと並んで双璧だろう。
ただし、2010年シーズンは先発投手陣に難点があった。クォリティ・スタートの数がナ・リーグ全体で下から2番目というデータからも察しがつくとおり、ディフェンスの基礎的な補強は焦眉の急だったのだ。