MLB東奔西走BACK NUMBER
赤字に苦しむ日本球団と何が違う?
史上最高収益に沸くMLBの経営術。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKYODO
posted2010/12/26 08:00
WBCの開催を発表したMLB第9代コミッショナーのバド・セリグ。その手腕と実績への評価は高く、昨季限りの退任が予定されていたが、オーナー会議で契約延長が満場一致で承認され、2012年まで任期が延長された
日本球界の今年のストーブリーグは、岩隈久志、西岡剛両選手のポスティング制度によるメジャー移籍(ご承知の通り実現したのは西岡1人)が話題になる一方で、横浜ベイスターズに引き続きヤクルトスワローズの球団身売り騒動が世間を賑わせた。
関連報道によれば、ほとんどの球団が依然として赤字経営状態ということで、2004年にバファローズとブルーウェーブとの球団合併に端を発した、「球界再編」がクローズアップされて以降も、ほとんど改善されていない惨状が浮き彫りとなった。
そんな中、先頃ブルワーズのプリンス・フィルダーの来日に合わせ、日本外国特派員協会でパネル・ディスカッションが行われた。参加者の1人、MLBジャパンのジム・スモール代表の話を聞き、“球団経営”という部分での日米格差に改めて考えさせられてしまった。
1992年と比較すると収入は約6倍増! 好景気に沸くMLB。
スモール代表の4つの発言に目を通して頂きたい。
「現在のMLBは最盛期を迎えていると考えている。この7年間観客動員は毎年7300万人を超え、収入も過去最高で、バド・セリグがコミッショナーに就任した1992年と比較すれば約6倍に達している」
こうMLB全体の状況を説明した上で、フリーエージェントという制度がもたらした球団経営に対するインパクトを説明していく。
「1976年にフリーエージェント制度が導入されて以降、選手の年俸は一挙に高騰。そんな状況下でオーナーの選択肢は2つしかなかった。高額年俸で資金を失うか、もしくは支出における年俸の占有率を今まで通りに保つため、収入を増やすしかなかった。もちろんオーナーが選んだ道は後者であり、それを実現するための方策を見つけ出す必要があった」