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ブンデスで前半戦最大のサプライズ!
弱小マインツを変えた青年監督。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2010/12/22 10:30
選手時代はDFで、キャリア最高はブンデスリーガ2部。24歳で現役引退しているトゥヘル氏は、引退直後にはバーでアルバイトをしながら大学に通い、指導者の資格を取った
開幕直後の勢いが失われた原因は見えているが……。
第8節から16節までの9試合では勝ち点を9ポイントしか得られず、マインツの調子は下降気味だ。
「相手がスペースを消し、引いた戦い方を採用するようになったことと、選手たちの自信の欠如」が不振の原因だと『ビルト』紙は、指摘している。
先に挙げたように、「相手にしっかりとプレッシャーをかけること」を選手たちに徹底させたトゥヘルだが、相手がボールをキープすることではなく、逆にマインツにボールをキープさせるような戦い方を選択してきたために苦しい戦いを強いられている。プレッシャーを拠り所とするリアクション型のサッカーで結果を残してきたチームは、自らアクションを起こすことが出来ずに苦しんでいる。
選手の自信の欠如は決定率の低下に表れている。第7節までは『ビルト』紙が集計する決定機に対するゴール率が62%だったのに対し、第8節以降は47%に低下してしまった。第6節、バイエルンを2-1で下した際に生まれたマインツの2ゴールなどは、いずれも年に1度決まるかどうかのファインゴールだった。連勝する中で自信を深め、思い切りの良いプレーをする。思い切りの良いプレーがさらなる成績につながる。開幕直後の好循環は、影を潜めつつある。
「昨季よりも確実に成長している」とハイデルGMは楽観視。
第16節、シャルケに敗れたあと、センターバックのブンガートは自信の欠如を認めている。
「開幕からの7連勝中のパフォーマンスがあれば、シャルケにも敗れることはなかっただろうね」
もっとも、ハイデルGMは楽観的だ。
「(第16節終了時に)我々が4位にいるなんて、一体誰が想像していたというんだい? チームは昨季よりも確実に成長しているんだ。心配はいらない」
調子を落としつつあるからこそ、青年監督トゥヘルが後半戦にどのような手を打ってくるのかに注目は集まっている。マインツとの契約を2013年6月末まで残しているが、その先に描くのはビッグクラブへ移ること。
そういえば、快調に首位をひた走るドルトムントのクロップ監督が、プロ監督としてのキャリアを歩み始めたのもマインツだった。果たして、トゥヘルはクロップのような転身を遂げる足掛かりをつかめるのだろうか。