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ブンデスで前半戦最大のサプライズ!
弱小マインツを変えた青年監督。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2010/12/22 10:30
選手時代はDFで、キャリア最高はブンデスリーガ2部。24歳で現役引退しているトゥヘル氏は、引退直後にはバーでアルバイトをしながら大学に通い、指導者の資格を取った
レギュラー不要戦略は「英国風のサッカー」実現のため。
コンディションを重視するのは、ハードワークを選手に課しているから。トゥヘルは、その理由を自身の理想とするサッカーと合わせて、こんな風に表現している。
「英国風のサッカーを常にイメージしている。よく走り、力強くプレーして、ボールを敵陣深くまで運ぶ。相手にボールをもたれたときにはプレッシャーをかけるべきなんだ」
理想のサッカーを実現するためにはコンディションが左右するという確固たる信念をトゥヘルは持っている。昨季も似たようなことがあった。前半戦に大活躍したイバンシッツも、昨季後半戦はたびたびスタメンを外された。一時は監督の起用法に疑問を抱いていたが、今季からは目の色が違う。監督の方針がぶれないからだ。レバークーゼン戦で途中出場から決勝ゴールを決めた際、殊勝なコメントを残している。
「監督は見てくれている。俺はこれからもやってくるチャンスをつかむんだ」
この試合のあと、トゥヘルはイバンシッツを起用した理由を、練習でハードワークを怠らなかったからだと明かしている。
選手起用の妙は、あるデータとして明確に表れている。
途中出場の選手によるゴールの数々だ。リーグ戦16試合を終え、途中出場の選手が決めたゴール数は、10におよぶ。もちろん、リーグトップの成績だ。
研究熱心な戦術家ではあるが、ハプニングに弱い一面も。
選手起用の次に挙げるべきは、戦術的な柔軟さだろう。
試合中にテクニカルエリアに出ていき、トゥヘルが細かく指示を送る様はブンデスリーガの名物になりつつある。彼が指示しているのは、選手の並び方。基本とするのは中盤をダイヤモンド型にした4-4-2だが、中盤の形はときにBOX型にもフラットにもなり、FWを縦に並べて4-2-3-1に近い形になることもある。時間帯や得点差などに応じて、細かく並びを変える。さまざまな布陣に対応できるのは、選手を固定しないからであり、対戦相手の戦い方を徹底的に研究するからだ。相手が布陣を変えてくれば、マインツもまた布陣を変える。
ただ、研究熱心なあまりに、墓穴をほったこともあった。第10節、ドルトムントとの首位攻防戦のことだ。ドルトムントのクロップ監督は、この試合の前に選手に向けても、メディアに向けても、あるメッセージを発していた。
「マインツは我々に合わせたサッカーをするだろうが、我々は自分たちのやり方を貫くんだ!」
ところが、ほとんど実戦練習を積まないまま、クロップは普段の4-2-3-1ではなく、4-3-2-1を採用した。これに戸惑ったのは、マインツの選手たちとトゥヘルだった。何しろ、前例がないのだから。結局、ドルトムントの出方をうかがわざるを得なかった前半での失点が響き、首位を明け渡すことになってしまった。