三食見学ツアーBACK NUMBER
神奈川大学陸上競技部/駅伝
「体脂肪4%以下が箱根の関所」
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/12/04 08:00
坪内選手は初めて肩にかけた伝統の襷に「緊張します」
スイーツ厳禁! 砂糖の禁断症状に苦しめられる夏合宿。
「箱根を走る連中は、練習も生活態度もしっかりしてる。節制できてる部員はタイムが速くなるけど、隠れてお菓子を食べてるやつは結果を残せませんね。自分に甘いやつはダメ」
同席していた大後栄治監督が「坪内は自分でコントロールできるからいいんだけど」と断ったうえで、選手のつまみ食いには苦言を呈する。
「三度の食事で栄養素は十分に補える。糖分の過剰摂取はパフォーマンスに悪影響を与えるので間食はやめなさいと指導しています。夏の合宿ではコンビニに行けない山奥にこもって、強制的にお菓子を取り上げる(笑)。タイムは確実に向上するんですが、それでも間食をやめられない部員もいる。白糖の禁断症状って肉体的にかなりつらいものなんです」
ひと月に800kmも走ってるんだから、ケーキのひとつやふたつのカロリーなどすぐに消費しそうなものだが、コンマ1秒を競う世界に身を置くランナーには無用の長物なのだろう。箱根を越えるのはラクじゃない。
体脂肪4%以上の選手は箱根を走る資格なし!
「箱根を走る選手の体脂肪率は4%未満。不思議なもので、レースの直前になると、自然と身体が絞れてくる。アドレナリンやホルモンのバランスが関係しているのか、練習量はセーブしているのに体重が落ちるんですよ」
逆にいえば体脂肪率4%以上の選手は箱根を走る資格がない。あまりにも厳しすぎるレギュレーションである。監督はつづける。
「体重は軽いほどタイムは速くなる。1区間の約20kmを走りきれるエネルギーを残して、余分なものはできる限りそぎ落とす必要がある。大量の糖分を含む炭酸飲料は当然禁止していますし、給水を必要としない身体づくりを目指して、体内の水分量を一定に保つように指導しています。他のスポーツでは、水分を十分に補給しろと指導するのが常識になってると思いますが、われわれは少し違うんです。とはいっても、やりすぎると脱水症状になってしまう。正常と異常の境界にまで肉体を追い込むわけですが、その見極めはむずかしい。一般の方にはお勧めしませんね」
不自然なまでに抑制された食生活によって得られる並外れた持久力。箱根駅伝は選ばれし者だけに用意された舞台なのである。
「やめたいと思ったことは何度もあるけど、箱根駅伝のためにがんばってきたわけですから……。まだメンバーに選ばれると決まったわけではないけど、絶対に走りたいです」
色白の坪内選手の頬が赤く染まった。