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神奈川大学陸上競技部/駅伝
「体脂肪4%以下が箱根の関所」
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/12/04 08:00
坪内選手は初めて肩にかけた伝統の襷に「緊張します」
――箱根に挑むランナーの“甘くない”節制生活――
首都高にはのらず、読売新聞東京本社前から箱根駅伝の1区をなぞって走る。六郷橋で多摩川を渡って、鶴見中継所を通過。2区の途中でコースを外れ、神奈川大学のキャンパスに向けてアクセルを踏む。到着したのは朝7時すぎ。未明から大学付近で走り込んでいた陸上部員たちが三々五々寮に戻ってきた。
'97年の第73回大会で総合優勝をはたし、箱根駅伝の出場回数は41回を数える古豪の神奈川大学だが、シード権を失った'09年はあえなく予選落ち。18年連続出場の記録はとだえてしまったが、今年10月に開かれた予選会で8位に滑り込み、来年の出場権を獲得した。安堵するのもつかの間、1月2・3日のレース本番に向けて研鑽を積んでいる。
「月間の走行距離は平均800kmほどで、毎日20kmから30kmぐらい走ってます。早朝に距離を稼いで、夕方からはチームみんなで走ったり、筋トレなどの個人練習をするというのが基本的なスケジュールですね」
予選会にも出場した3年生の坪内武史選手が陸上部員の一日を説明してくれた。競技中心の日々でも、授業は休まずに出席する。「サボっても何もすることがないので」と笑うが、じつに生真面目だ。
貧血は月間800kmを走る長距離ランナーの職業病。
「自分はもともと貧血なので鉄分を多くとるように心掛けてます。朝と晩は寮の食堂で食べますが、毎食、鉄分を多く含むひじきを出してくれるので助かりますね」
いわゆるスポーツ性貧血は、地面を蹴るときに足底が受ける衝撃による血管内の赤血球の破壊が原因のひとつとされている。足の裏にダメージを与えるランナーにとっては職業病ともいえる。坪内選手は本格的に長距離をはじめた中学生のころから患っているそうだ。
「そのせいもあって食事には気を遣ってます。プルーンは欠かせませんねえ(笑)」
限界まで走り込むせいで、貧血になってしまう。過ぎたるは及ばざるがごとしというが、トップアスリートの練習はじつに身体に悪い。