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フェラーリ、ライコネン獲得!!
2人の王者を並べた跳ね馬の本気度。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAP/AFLO
posted2013/09/22 08:01
今年6月のイギリスGPで、デッドヒートを見せたアロンソ(左)とライコネン(右)。2人が揃うフェラーリの赤は、今年よりもさらに眩い輝きを放つのだろうか。
イタリアGPが終わって3日後の9月11日、フェラーリがキミ・ライコネンの獲得を発表した。大方が予想していたとおりの結果だったにも関わらず、その決定は大きな驚きを持って受け止められている。なぜなら、フェラーリが下したこの決断には、これまで跳ね馬に受け継がれてきた伝統とは異なる切迫した緊張感が感じられるからである。
それは、結果を出すためには手段を選んではいられないというマラネロの焦りとも思える強い勝利至上主義だ。これまでフェラーリのドライバーラインアップは個人の能力の高さよりも、組織としての和を重んじた選択が伝統的に行なわれてきた。
要するに速いドライバーを2人そろえて無用な競争を行なわせるよりも、どちらか1人を優先させてチャンピオンシップポイントを稼いで、効率良くタイトルを狙うという考えだ。
ジル・ヴィルヌーヴの死によって強まったフィロソフィ。
1979年にジョディ・シェクターがタイトルを獲得した陰にはジル・ヴィルヌーヴの貢献があり、そのヴィルヌーヴがチーム不和によって'82年に悲運の死を遂げると、フェラーリはそのフィロソフィをより一層強くしていったように思う。
唯一の例外はナイジェル・マンセルを擁していた'90年に、アラン・プロストを加入させたときだが、これはフェラーリが望んでいたというより、修復しがたいほどの衝突がマクラーレンで発生したことによる副産物。それはマンセル&プロストの関係が1年しかもたなかったことでもわかる。
その後、数年間のモラトリアムの時期を過ごした跳ね馬が、再び自らの伝統を鮮明に打ち出して戦い出したのが'96年から。ミハエル・シューマッハという絶対的なエースドライバーを立て、エディ・アーバイン、ルーベンス・バリチェロ、フェリペ・マッサを、常にサポート役に徹し続けさせてきた。