F1ピットストップBACK NUMBER
フェラーリ、ライコネン獲得!!
2人の王者を並べた跳ね馬の本気度。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAP/AFLO
posted2013/09/22 08:01
今年6月のイギリスGPで、デッドヒートを見せたアロンソ(左)とライコネン(右)。2人が揃うフェラーリの赤は、今年よりもさらに眩い輝きを放つのだろうか。
史上初めて2人の元チャンピオンを並べた意図。
そのフェラーリがフェルナンド・アロンソというナンバーワン・ドライバーがいるにもかかわらず、チャンピオン経験者のライコネンを迎え入れたのである。
フェラーリの2つのシートを元チャンピオンが埋め尽くすのは、1950年から始まったF1の歴史で今回が初めての椿事。ライコネン獲得の陰には、それだけ大きな意味が含まれていると考えていい。
その背景には、コンストラクターズ選手権のポジションも関係しているように思う。現在、ドライバーズ選手権でトップのセバスチャン・ベッテルに53点差をつけられ、3位のルイス・ハミルトンからは28点差に迫られて苦しい状況に立たされているフェラーリとアロンソだが、じつはコンストラクターズ選手権でも3位のメルセデスAMGとの差は、わずかに3点。メルセデスAMGの2人がともに100点以上加点しているのに対して、マッサの今年の得点はイタリアGP終了時点で79点。アロンソよりも90点も低い。
コンストラクターズ選手権の順位が上がれば元は取れる。
ドライバーズタイトルは名誉だが、コンコルド協定によってFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)から得る分配金の主な額は、コンストラクターズ選手権の順位で決まる。その額が大きいトップ3は、順位が1つ変動するだけで、数十億円が増減する。
ヨーロッパ経済の厳しい現状を考えると、ライコネンを大枚をはたいて獲得しても、コンストラクターズ選手権の順位を上げることができれば、十分、元は取れる。もし今年のアロンソのポイントに、ロータスで獲得しているライコネンの134点が加わっていれば、コンストラクターズ選手権でフェラーリはいまごろトップを走っていることになるという推論は、マラネロの上層部にとって、もはや机上の空論にとどめておくことはできなかったのではないだろうか。