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さらば! 愛しの湘南シーレックス。
横浜の二軍に何があったのか? 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/11/26 10:30

さらば! 愛しの湘南シーレックス。横浜の二軍に何があったのか?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

湘南シーレックスのファンフェスタで、「みんなあなたが大好きで賞」を受賞した佐伯貴弘。この日のサプライズゲストとして球場を盛り上げてくれた

まさに「和」を体現していたマリーンズの優勝パレード。

 沿道のマンションにはユニフォームが飾られ、住民たちが紙吹雪を降らせている。ホテルの従業員も、宿泊客も総出で、誰もがマリーンズの日本一を祝っている。まるで今季のロッテが目指して来た「和」の最終形態を見せられた気分だ。人数の多い少ないじゃない、そこにいた人たちが皆、マリーンズを愛していることが手に取るようにわかるのだ。そのことが本当に羨ましい。

 追浜商店街の関係者がこんなことを言っていたことを思い出す。

「シーレックスが優勝して追浜の街をパレードしてくれたら、また商店街も賑わいを取り戻すんじゃないかと思っていたんですけどね……。設立当初からシーレックスに対して協賛や応援をしてきたつもりですけど、ここ数年は正直、地元の方も冷めているような気がしました。結局、勝たなければ地域密着は難しいんだと思いますよ」

 地域密着と勝利主義はどこかで相反するものだと思っていた。でも違う。勝たなければ、魅力的なチームでなければファンはついてこない。シーレックスの11年間、やったことに間違いはないし、築き上げたものも大きい。だが、最も影響力のある「優勝」という要素が足りなかった。

ベイスターズの身売り問題は何にも解決しちゃいない!

 これは同じく地域密着を掲げる一軍の横浜ベイスターズにも言えることである。球団売却が物別れに終った住生活グループは、本拠地が横浜ではダメだと判断した、という話もある。「冗談じゃない。INAXの便器を使うぐらいなら漏らす方を選ぶ」と言ってやりたいところではあるが、この事実は厳粛に受け止めなければならない。

 何故なら、ベイスターズの身売り問題は、ひとまず据え置きになっただけで何も解決していない。来年オフには同じ出来事が起こることはすでにわかりきっていることなのだ。

 ベイスターズが横浜に残るために、何をすればいいのか。すでに探しているであろう新しい親会社に横浜が魅力的な町だと感じてもらうにはどうすればいいのか。

 まずチーム。もう負けることは許されない。来年も今年と同じような成績であれば、最悪の事態も覚悟しなければならないだろう。シーレックスの消滅は、身をもってそのことを教えてくれたように思う。

 そして、ファン。前出の商店街関係者はこんなことも言っていた。

「今は不況で商店街にも力がないから、シーレックスに対して応援しきれなかったという申し訳ない気持ちが強いんです。僕らも消滅のニュースを新聞報道ではじめて知ったのですが、反対の声をあげることもできなかった。消滅すると分かっていても、『今までありがとう』としか言えない。それは悔しいなんてもんじゃなかったですよ」

 それはベイスターズだけの話じゃない。身につまされる他球団のファンもいることだろう。

 どんな結末になろうとも、決まってから後悔はしたくない。だから、来年は1試合でも多く球場に足を運ぼうと思う。少しでも、その町のチームを愛してやまない住民として映るように。

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