野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
さらば! 愛しの湘南シーレックス。
横浜の二軍に何があったのか?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/11/26 10:30
湘南シーレックスのファンフェスタで、「みんなあなたが大好きで賞」を受賞した佐伯貴弘。この日のサプライズゲストとして球場を盛り上げてくれた
ファンフェスタに現われた佐伯が「最高の1年でした」。
当日は開場前から大盛況だった。
選手の着用ユニフォームを先着100名に1万円で叩き売りするなど、最後らしい催しがあるというので9時30分に現地着したのだが、すでにユニフォームの列には100人以上が並んでいる状態。それでも、残り数枚というギリギリのところでやっと手に入れたユニフォームは、おぉ、未完の大器のまま終わった大型右腕・後藤伸也のものではないか――。
なんて感動に浸りつつ、シーレックスとして最後のスカスタのスタンドへ。約2000人が集まったファンフェスタは、小規模ながらもこの球団らしい実に温かなものだった。
印象に残ったのは、この日のサプライズゲストとして、退団以来はじめてファンの前に現れた佐伯貴弘の言葉である。
「2010年は佐伯貴弘にとって、最高の1年でした。つらく苦しいと思ったこともありましたが、たくさんのファンの皆さんの支えがあり、最後まで横浜ベイスターズの一員として全うすることができました」
今年の佐伯はプロ入り最低の10試合にしか一軍の試合に出場していない。それでも『最高の1年』という言葉が出てきたことは、横須賀のファンの温かさがあったからに他ならない。
地域密着に関してシーレックスとマリーンズを比較する。
湘南シーレックス、改めていいチームだったんだなぁ。
ありがとう、湘南シーレックス。
なんて感じで晴れやかに幕を閉じたシーレックスフェスタ。しかし、帰りに乗ったタクシーの運転手の話を聞いた途端、モヤモヤが湧いてきた。
「今日でシーレックスなくなっちゃうなんて知りませんでした。僕のまわり、誰ひとりとして横浜ファンいませんから」
いや。きっと。多分。たまたまだ。地元に住む運転手が、友人も含め全員地元チームのファン以外だっていうこともあるさ。福岡でも、北海道でも、仙台でも、広島でも、こんなことはフツーに……ありえないだろ! 絶対に!
実は夏にシーレックスの地元、追浜の商店街を取材した時も薄々感じていた。あんまり熱がない。そりゃ二軍なんだからしょうがないのだろうが、なんだか腑に落ちない。そして疑念が湧いてきた。シーレックスの地域密着はホントに成功したと言えるのだろうか……。
そんな気持ちを抱えたまま、翌日、生まれて初めて優勝パレードというものを観に行った。
千葉ロッテの日本一のパレード。
幕張のベイタウンからマリンスタジアムに至るまでの沿道に並ぶ人たちは、老いも若きも男も女も、そりゃ千葉県民総出じゃないかと思うほどの人出である。子供の頃に通った川崎、一番マリンに通った'90年代後半を考えれば、実に感慨深い光景だ。