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150キロ投手大豊作のドラフトだが、
“イチロー”の原石を見逃すな! 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/10/27 10:30

150キロ投手大豊作のドラフトだが、“イチロー”の原石を見逃すな!<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「ハンカチ王子」と呼ばれたのも今や昔。早大野球部主将として活躍する斎藤。球威があるとは言えないが、縦横のスライダーとフォークを武器として、ツーシーム、カーブ、チェンジアップなども織り交ぜた頭脳的ピッチングは依然として高評価だ

 あるスカウトが話してくれたことがある。

 素材とはつまり、車に例えれば「排気量」なのだと。

 実にわかりやすかった。

「たとえ1500㏄であっても、完成されている1500㏄であれば、プロ以前の段階なら未完の1800㏄や2000㏄の車に勝つこともある。むしろ、甲子園で活躍する選手を見ていても、そういうケースの方が多いのではないか。小さいエンジンの方が整備も容易で、持っている力も引き出しやすい。ただし、言うなれば、プロは2000㏄クラス以上のレース。どんなに手をかけ性能を上げても、1500㏄前後のクラスではいずれ限界がくる。性能を引き出すことに成功した2000㏄の車には絶対に追いつけない。スカウトの仕事は、その排気量を見極めることなんです」

 おおよそ、そんな内容の話だった。

150キロ投手であることで、すでにプロの基準は満たす。

 この見方を投手に当てはめると、150キロのボールを投げられれば、ひとまず「排気量」の面でプロの世界に入るだけの資格を有していると言っていいだろう。そういう意味では、なるほど、今年は確かに豊作だ。

 中央大の澤村拓一の157キロを筆頭に、早稲田大の大石達也は155キロ、同じく早稲田大の福井優也も152キロの自己最高記録を持っている。注目の斎藤佑樹も、これまでなぜか149止まりだったのだが、先月、ついに150キロをマークしてしまった。

 左腕に目を移しても佛教大の大野雄大が151キロを記録している。先日、東北福祉大を相手にノーヒットノーランを達成した八戸大の塩見貴洋は147キロだが、希少価値の高い左腕は「プラス5キロ上積み」が通例なので、右腕と比較したとき、大野なら156キロ、塩見でも152キロの価値があることになる。

単なる150キロ投手の枠を超える一二三慎太という存在。

 彼ら以外にも150キロ投手はまだ数名おり、これだけ150キロ投手がそろう年というのはそうあるものではない。

「排気量」ということで、もっともわかりやすい例は「外れ1位候補」として名前が挙がっている東海大相模の一二三慎太だ。

 この5月にサイドハンドに変えたばかりであったにもかかわらず、横手ながら最速150キロをマークするなど、一二三は圧倒的なパワーで夏の甲子園で決勝戦まで勝ち上がった。また、打撃でも打率.571と結果を残し、底知れぬ馬力を感じたものだ。

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